税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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海外資産あぶり出し

 経済の国際化に伴い世界の国境は低くなる一方。海外に資産を保有する日本人も増加の一途だが、こうした中、国税当局による海外財産への追及も一段と厳しくなってきた。平成24年度税制改正では、海外に所有する資産の詳細について国税当局への報告が義務付けられる。国内の資産をせっせと海外に移してきた資産家にとっては過去の常識が通用しない時代になってきたといえる。

特に海外勤務経験者は、戦線恐々としている。たとえばAさんは、1990年代、上海に勤務中に190万円でマンションを購入居住していたが、5年後に賃貸として、帰国。現在2010万程度に上昇。Bさんは、インドネシアに勤務、現地のハンドリングフイ-を、現地にプ-ル。Cさんは、イギリスのマンテスタ-に勤務。その後EU諸国に転勤。各国にユ-ロで預金など相当の事例がある。課税当局は、日本以外は、質問検査権が及ばない。
納税者に「海外財産の届け出制度」とは、この弱点を利用した制度だ。

「報告制度」義務化へ 懸念される資産家流出

 財産の海外移転を実行に移してきた資産家たちがいま恐れているのが、平成24年度税制改正で創設されることになった「国外財産調書制度」だ。海外に所有する財産の詳細について国税当局に報告を義務付けるというもので、これを怠った場合の罰則規定もセットで創設される。
 具体的には、その年の12月31日において国外に合計5千万円超の財産を所有している居住者は、その財産の種類や数量、価額その他必要事項を記載した「国外財産調書」を、翌年3月15日までに税務署に提出しなければならない。財産の評価は原則として「時価」。ただし、「見積価額」とすることもできる。

 この制度、実は海外財産の存在に手を焼いてきた国税庁が3年越しで要望してきたものだ。国税庁では毎年の税制改正に際して独自の「税制改正意見」をまとめているが、平成22年度税制改正意見で初めて「外国資産申告制度の創設」を載せてきた。「納税者が国外(特に日本と情報交換協定がない国や地域)に資産を保有する場合、税務当局がその存在を把握することは極めて困難」というのが要望の理由。そして、国外に財産を保有する納税者は租税回避を意識している可能性が高いということで、「報告義務違反については罰則罰金または課徴金を設ける」としている。当時から任意ではなく足場の固い情報確保を狙っていたようだ。
 
そんな国税庁の念願叶って「国外財産調書制度」として平成24年度税制改正大綱に掲載された内容を見ると、ペナルティだけでなく“特典”も設けられている。
 「国外財産調書制度」とセットで設けられるのは、「過少申告加算税の特例」。国外財産に関する所得税や相続税について申告漏れや無申告があった場合に、国外財産調書がきちんと提出されていたかどうかでペナルティに差をつけるというものだ。
 申告漏れとなっていた国外財産について、国外財産調書には正しい記載がされていたという場合には、本来かかってくる過少申告加算税(10%、15%)または無申告加算税(15%、20%)の5パーセント相当額を控除する。ただし、税務当局による更正等を予知して期限後に提出されたものである場合は無効。
対象となるのは、所得税については国外財産から生じる利子や配当、国外財産の貸し付けや譲渡による所得など国外財産に起因して生じた所得についてきちんと記載されていた場合。原則としてその申告漏れがあった年分の国外財産調書が正しく提出されていることが条件だが、これらの財産の譲渡や解約などがある場合はその前年分の国外財産調書でチェックする。相続税については、被相続人により提出された相続の前年分の国外財産調書または相続人により提出された相続年分の国外財産調書のいずれかに、その申告漏れ等に係る国外財産の記載がある場合が“特典”の対象となる。
一方、国外財産調書の提出がない、または申告漏れ財産についての記載がない場合には、逆に本来かかってくる過少申告加算税や無申告加算税に5パーセント相当額が加算される。国外財産調書を正しく提出しているか否かで、無申告や申告漏れがあった場合の厳しいペナルティが軽くもなるし、逆に更に重くもなるという仕組み。

 注目したいのは、こうした加算税絡みの仕掛けに加え、コテコテの罰則規定も設けられていること。大綱によると、国外財産調書の不提出や虚偽記載があった場合には、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」という法定刑まで用意されている。形骸化しがちな法定調書もこれだけのカンフル剤が打たれていれば嫌でもフル稼働するだろう。
さらに大綱には、国外財産調書に関連した税務調査での質問検査権の規定を「整備」することも盛り込まれており、国際調査にかける国税庁の本気度が伝わってくる。今後の税務調査シーンで国外財産に向けた国税当局の追及がこれまで以上に厳しくなることは間違いなさそうだ。
なお、この改正は平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用。罰則規定については、平成27年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用する。
 「国家公務員の人件費2割削減」を掲げる民主党政権下で、税務職員にはこれまで以上のコストパフォーマンスが求められているところ。限られた人員で効率的な税務調査を展開するにはそれなりの絞り込みが必要だが、その絞り込み作業に威力を発揮する資料情報の収集が、ここ数年国税庁にとっての最重要課題となっている。「国外財産調書」の創設もその一環。資産家にとっては面倒なことこの上ないが、決まってしまえば従わざるを得ない。痛くもない腹を探られるのに嫌気が差した資産家の海外流出が懸念される。

(出典:エヌピー通信社 発行 納税通信 2012年1月16日 第3206号より)





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