税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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配偶者に継続居住権の確保

     法制審議会の相続部会が追加試案を公表!

 法制審議会民法(相続関係)部会では,第23回会議(平成29年7月18日開催)において,中間試案後に追加された新たな方策等を対象として「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」を取りまとめました。
 今回追加試案の対象項目となったのは、部会における6つの検討項目のうち「遺産分割等に関する見直し」及び「遺留分制度に関する見直し」です。 
 このうちの遺産分割等に関する見直しのうちの「配偶者保護のための方策」と「仮払い制度等の創設・要件明確化」について紹介します。

1.配偶者保護のための方策(持出免除の意思表示推定規定)
 婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他の一方に対し、居住用不動産の全部又は一部を遺贈又は贈与したときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定する旨の規律を掲げることとしました。
 例えば、相続人が配偶者と子供2人で、相続財産が居住用不動産(被相続人の持ち分1/2)が評価額3,000万円とその他の財産6,000万円の合計9,000万円、そして配偶者には居住用不動産の1/2である3,000万円が贈与されていた場合を考えてみましょう。
現行ですと配偶者の相続財産は次のようになります。
(相続財産9,000万円+贈与3,000万円)×1/2-贈与3,000万円=3,000万円
そして、配偶者の最終的な取得額は、
  相続財産3,000万円+贈与3,000万円=6,000万円
となり、結果として居住用不動産の贈与があった場合となかった場合とでの差異が生じないこととなってしまいます。
 婚姻期間が20年を超える夫婦の一方が他方に対して居住用不動産を贈与等する場合には、通常それまでの貢献に報いるとともに、老後の生活保障を厚くする趣旨で行われるものと考えられます。しかしながら上記のように持戻しが行われることにより配偶者の相続財産から被相続人の贈与財産の価額を控除してこれを減額されてしまうことは、被相続人の意思に反することと考えられます。
 もし、持戻しの免除の意思表示があった場合には上記のケースでは配偶者の相続財産はどうなるでしょうか。
  相続財産9,000万円×1/2=4,500万円
そして、配偶者の最終的な取得額は、
  相続財産4,500万円+贈与3,000万円=4,500万円
となり,贈与がなかった場合と比べ,より多くの財産を最終的に取得することができることとなるのです。
 このように、持戻しの免除の意思表示があったものと推定する規定は、被相続人の配偶者への貢献に報いるとともに、老後の生活保障を厚くするという意思を尊重した取扱いができるようになるものと考えられます。

2.仮払制度等の創設・要件明確化
 平成28年12月19日最高裁大法廷決定により、預貯金債権についても遺産分割までの間は共同相続人全員が共同で行使しなければならないこととなりました。
 遺産分割前にも払い戻す必要が発生することがあります。例えば、葬儀費用の支払い、共同相続人において被相続人が負っている債務の弁済、被相続人から扶養を受けていた共同相続人の生活費を支払う場合などがあり、その場合には共同相続人全員の同意が必要なのですが、全員の同意が得られない場合には払い戻すことができないという不都合が生じてしまいます。
 このような場合には、「家事事件手続法第200条第2項の仮分割の仮処分」を活用することが考えら、これにより,共同相続人間の実質的な公平を確保しつつ,個別的な権利行使の必要性に対応することができるものと思われるのですが、ここには「急迫の危険を防止」する必要がある場合に仮処分ができるという文言上の厳格な要件を課されています。
 そのため立法により、預貯金債権の仮分割の仮処分については,家事事件手続法第200条第2項の要件を緩和することとし,家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができるものとするようにしました。

 今回紹介した追加試案はいずれも相続人の被相続人が亡くなった後の生活を考慮したもので、本年末又は来年初めの要綱案の取りまとめを目指すとしています。

    参考資料  法務庁ホームページ
          「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する
          試案(追加試案)」(平成29年7月18日)のとりまとめ
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