税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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任意売却と差押解除

今回は、任意売却と差押解除について述べてみる。

(1)浜松市差押解除懈怠事件 
 ①平成26年9月8日の静岡地裁浜松支部における判決
  (事案)
 国民健康保険料を滞納していたAさん(原告はAの相続人X)の不動産を差し押さえていた浜松市(Y)に、当該不動産の任意売却を行うためにXが差押えの解除をYに求めたが、拒否されたため、任意売却より低額な競売手続きで当該不動産が売却され損害を受けたとして国家賠償を求めたものである。
 静岡地裁浜松支部はXの申し出を認め110万円の損害賠償金の支払いをYに命じた。通常公売や競売の売却価格は市場価格の2割落ちであり、その損害は大きい。

  ②無益な差押え
 この事案ではなぜ国家賠償が認められたのであろうか。国税徴収法は79条第1項において‘差押えを解除しなければならない’事由を定めている。
 1つは納付や充当、課税の取り消し等で国税の全額が消滅したときである
 2つめは無益な差押えである。本件の場合、任意売却価格が678万円で、優先債権の元金が1928万円余りあり、明らかに租税債権の徴収は不可能であった。しかも同79条第1項第2号は、その文言からして効果裁量を認めたものとして解せない。客観的に差押解除義務が生じていた以上は、執行庁納税者の求めに応じて差押えの解除をしなければならないことになっている。
 徴収職員は差押え解除義務があるにもかかわらず、職務上通常尽くすべき注意義務を怠り、認定判断を漫然とおこなった結果として差押え解除義務を怠ったということが問題となる。

  ③税理士が注意すべき点
 最近の租税徴収義務において、執行庁がおこなっているのは売掛金等の入金を考慮して預金の差押えが行われている。現に国税徴収法基本通達47-17は差し押さえる財産の選択は裁量によるとしているにもかかわらず、滞納者の申し出の財産を差し押さえるよう指示しているのです。
 さらに滞納者の生活の維持または事業の継続に与える支障のない少ない財産であることも指示している。しかし、現実はこの通達は守られていない。上記の事案で問題となった、無益な差押えは国税徴収法48条2項により行うことはできない。しかし実務上は、時効の中断を目的とした差押えや、金融機関や納税者の債権者への波及効果を狙って行われている行為の報告もある。
 現に普通預金が0円になっていて、資金繰りに困った事例を見ている。社長が銀行に出向き確認したら差押えで預金が0円になっていた事例である。
 徴税職員は、差押え予告は再三してきたといっていたそうだが、社長はまったくその連絡は受けていないそうだ。
 もっと改正された審査請求手続きを考慮して、厳重に抗議する等納税者の権利を守っていくべきだと思う。
 上記の事案にしても優先部分の租税を納付する旨の申し出を行っても全額納付がなければ解除しない等の税務官署の一方的な対応を問題視して、適切な税務運営を行うように提言及び意思発信する必要があると考える。

(参考)国税徴収法 第79条
(差押えの解除の要件)
第七十九条  徴収職員は、次の各号のいずれかに該当するときは、差押えを解除しなければならない。
一 納付、充当、更正の取消その他の理由により差押えに係る国税の全額が消滅したとき。
二 差押財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び差押えに係る国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を超える見込みがなくなったとき。
2 徴収職員は、次の各号のいずれかに該当するときは、差押財産の全部又は一部について、その差押えを解除することができる。
一 差押えに係る国税の一部の納付、充当、更正の一部の取消、差押財産の値上りその他の理由により、その価額が差押えに係る国税及びこれに先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を著しく超過すると認められるに至つたとき。
二 滞納者が他に差し押さえることができる適当な財産を提供した場合において、その財産を差し押さえたとき。
三 差押財産について、三回公売に付しても入札又は競り売りに係る買受けの申込み(以下「入札等」という。)がなかつた場合において、その差押財産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に公売に付しても買受人がないと認められ、かつ、随意契約による売却の見込みがないと認められるとき。

(参考・引用:税理士新聞 第1522号、国税徴収法、国税徴収法基本通達)
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