税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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国税徴収法とは何か

「国税徴収法」とは何か

税務当局の精鋭部隊が、日本年金機構の委任を受けて行う年金保険料滞納者への強制徴収制度が拡充される見通しとの報道があった。
具体的には、日本年金機構が国税当局に徴収代理を依頼できる要件が緩和され、2015年10月1日から施行されるというものだ。
徴収代理制度とは、徴収ノウハウや組織力を持つ国税庁に対し、日本年金機構が徴収権を委任するもので、年金滞納者の増加に歯止めを掛ける一策として2010年(平成22年)に開始されている制度である。
ところで国民年金の加入者数は1800万人で、4ヶ月以上保険料を滞納している人は約620万人いるという。約35%の未納者を減らすためには、やはり他の機関の協力が無ければ無理なのだろう。
前置きが長くなったが、今回はこの未納保険料や未納税金等の徴収の拠り所となっている法律である「国税徴収法」に関して取り上げたい。国税徴収法は、一般にあまりなじみの無いように感じられるが、徴収の現場では、税金の取り立ての際には必ず使われる法律である。
国税徴収法とは、国税の徴収に関する手続きを定めた法律であるが、単に国税の徴収についてだけ適用されるものでなく、広く地方税の徴収の他、社会保険料などの公課の徴収についても準用されるもので、租税(国税・地方税などの税金)と公課(各種社会保険の保険料・負担金・会費・罰金等)の徴収に関する強制力のある法律なのである。
具体的には他の私債権よりも優先されること。(国税徴収法8条)
更に、徴収職員は徴収現場において自力執行権が付与されており、その場で差押が出来る権限を持っている。これは一般の債権者が裁判所を通して債権の取り立てを行うのとは、明らかに時間もスピードも違う強力な権限である。なお、この徴収職員とは国税徴収法第2条11項でいうところの「税務署長その他国税の徴収に関する事務に従事する職員」を指すのであって、一般の税務職員は取扱う事はできない。従って身分証明書の提示をし、本人確認をすることが必要となろう。
なお、国税徴収法と労働債権との優先順位であるが、国税徴収法上には優先規定はない。あくまでも租税(国税等)が優先であるとの規定だけである。
これに対し、民法上、労働債権は先取特権として、他の債権者より優先して弁済を受ける規定はある。(民法308条)
しかし、会社が倒産した場合、労働者が未払い賃金等の労働債権を受けようとしても国税徴収法では租税債権が優先されてしまうので注意が必要だ。
さらに、徴収職員は滞納処分のため、必要があるときは滞納者の物又は住居その他の場所に行き捜索することもできる。(徴収法142条)そして、その場で差押もできるのである。
これだけ強制力のある法律に滞納者はどのように対応して行ったらよいのだろう。
まず、滞納処分のための調査・捜索を受ける前に事前に滞納者に対しては文書等で照会が来るはずである。それを放っておくことが問題であろう。まず文書をもって納税相談に行くことが問題を大きくしない方法だろう。
さらにこれは、債権(国等)と債務(滞納者)との滞納処分の問題なのである。この時点で租税に対して不服を言ってもほぼ無理である。租税が確定してしまっているからである。
そうではなく、税額が確定される前の、課税処分の段階で不服があれば申立てをし、自らの主張をすべきであろう。
この不服申立の権利を放棄し滞納処分が決定してから行動を起こしても遅いのである。

2015年9月3日、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)の利用範囲を広げる改正マイナンバー法が衆院本会議で可決、成立した。今後は国税・地方税・社会保険税等の金額が個人番号に紐がついて把握されることになる。さらに2018年(平成30年)には金融機関の預金通帳番号までマイナンバーを広げようとしている。これにより滞納税額も一人ひとりわかることになり。滞納者の預金口座はすぐに差押の対象にもなりかねない。

以上見てきたとおり、国税徴収法はかなり強制力の強い法律である。従ってこの法律を現場で運用している徴収職員には過度な乱用は慎んでほしい。そして、この法律をもう少し世間に知ってもらう事も必要なのかもしれない。


                  参照資料  日本経済新聞2015年8月27日
                       NP通信社「納税通信」第3386号 
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