税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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税務署調査担当者の発言は公的見解か

税務署調査担当者の発言は‘公的見解’か?

 指導項目発言の後の更正処分は信義則に反するか?

『T&A master 9月8号 NO.561】に乗っていた東京地裁の判決を紹介します。
まず内容は、「原告企業が‘事前確定届出給与に関する届出書(付表)’に記載した届出額と違う金額を役員らに支給したことに始まる」事案で、その後更正処分が行われた事案です。(以下、「本件」という)。
 法人税法上、事前確定届出給与が損金算入の対象となるためには、届出書(付表)に記載した‘届出額’どおりの金額を支給しなければならない。
  したがって、原告企業が役員らに支給した事前確定届出給与は、‘届出額’と‘支給額’が違うため、全額が損金不算入となることはわかる。
  ところが、税務署の担当職員は、法人税法上損金不算入となる本件役員給与について、‘今回は更正処分をせず指導項目にとどめる’旨の発言を行った。
 そして原告企業は、調査担当者からの要請を受けて、‘支給額’を‘届出額’と同額に修正した付表を提出した。
 その後、税務署の調査担当職員は、税務署内で改めて検討した結果、‘本件役員給与が損金不算入となることは法人税法上明らかであり、指導事項にとどめることはできない’旨の修正申告をしょうようした。
 しかし、原告企業は、修正申告をする意思がない旨を回答した。(税務署担当者の要請どおり、支給額の訂正の付表を提出していたからだと思う)。
 そのため、税務署は、‘本件役員給与を損金不算入’とする内容の更正処分を行った。
  この更正処分を不服とした原告企業は、‘税務署の調査担当職員が更正処分をせずに指導項目にとどめる発言をした後に行われた更正処分は「信義則」には反するなどと主張して、更正処分の取り消しを求める訴訟を裁判所に提起していたものである。
 その結果、裁判所は、‘まず信義則により課税処分を取り消すことができる場合があるとしても、
(1)納税者が税務官庁の公的見解の表示を信頼し、その信頼に基づいて行動したところ、後にその見解に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか

(2)税務官庁の公的見解の表示を信頼した上で行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうか
という点を考慮することが不可欠であると指摘したのである。公的見解について裁判所は、様々な状況下で行われる税務署職員の見解の表示のすべてが公的見解の表示となるものではなく、税務署長その他の責任ある立場にある者の正式の見解の表示であることが必要になると判断した、ということである。

 裁判所は、本件の税務調査担当職員による指導事項にとどめる旨の発言及び付表の差替え要請について、‘税務官庁の一担当者としての見解ないし処理方針を示したに過ぎず、税務署長その他の責任ある立場にある者の正式の見解の表示であるとはいえないと指摘した。そのうえで裁判所は、本件について信義則の適用を肯定すべき事由があるとは認められない‘として本件役員給与を’損金不算入‘する内容の法人税更正処分は適法であると結論付けたのである。
 そもそも‘信義則’とは、民法上の原則です。民法第1条2項には、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と書かれている。私人間では、相手の言動を信頼して行動し、その結果損害を被ったような場合には、信義則違反の問題が生じます。これは‘禁反言の法理’とも呼ばれ、一度いったことを覆すようなことは後からしてはいけない、という常識的な考えです。一般の感覚からすれば、対税務署の場合でも同じではないでしょうか。
 むしろ税務署職員の指導によるものであれば、より信頼するものではないでしょうか。ところが、現行の裁判実務では、課税処分に信義則を適用することには極めて消極的なのです。最高裁第三小法廷昭和62年10月30日判決があるからです。内容は省略しますが、この判決以降、課税処分が信義則違反とされたものは、見当たらないのです。
 それは、先程も言っているように、次の要件満たす必要があるとしたからです。

  ①税務官庁が納税者に対して公的見解を表示したこと
  ②納税者がその表示を信頼し、その信頼に基づき行動したこと
  ③その後にその表示に反する課税処分が行われたこと
  ④そのために納税者が経済的不利益を受けることになったこと
  ⑤納税者が税務官庁の表示を信頼し、その信頼に基づき行動したことについて責めに帰すべき事由がないこと

 この5要件があると、課税処分になぜ信義則が適用されにくくなるのか?
指導項目にすると納税者に伝え、納税者も要請に従って行動を起こしたわけだから、後になって更正処分を行うのはどうかと思うのですが。 
 この判決を見ると、一税務署職員の発言や要請に従う必要なし、ということになるのではないでしょうか。つまり、税務署長及びその他の責任ある立場にある者のお墨付きがあるまで、従う必要なし、ということになるのではないでしょうか。
 
  {参考・引用 T&Amaster 9/8号 NO.561、民法第1条2項、最高裁判決} 
    
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| 税務調査 | 13:17 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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