税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

<< PREV | PAGE-SELECT | NEXT >>

>> EDIT

賃貸建物の修繕費等の負担者は誰か

  2014年(平成26年)6月15日号の税理士新聞に‘賃貸建物の修繕費等の負担者は誰か’という見出しで税論卓説(税理士 櫻井博行)が掲載されていた。
今回はこれについて紹介させていただきます。

  建物の修繕等のために支出した金額について判断を求められることは多いが、法人税基本通達7-8-1以下にはその取扱いが詳細に記載されている。しかし、その範囲は修繕費か資本的支出かの判定に終始している。実際の現場では、賃貸借の対象となっている建物を修繕したときには、修繕費かどうかではなく、家主か賃借人のどちらが負担しなければならないのかということの判断を迫られる。

(1)税務上の取扱
  この問題については、法人税法、所得税法ともに別段の定めはなく、あくまで税法上の問題として取り扱われるのである。しかし、平成23年4月18日付国税庁長官通達‘東日本大震災に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)’の9では、法人が賃借資産につき修繕費等の補修義務がない場合においても、当該資産が災害により被害を受けたため、当該法人が当該賃借資産の現状回復のための補修を行い、補修のために要した費用を修繕費として経理したときは、これを認める‘としている。

(2)民法の定め
  民法606条1項は、賃貸人は原則として建物の使用や収益に必要な修繕をする義務を負うとしている。
  賃借人が、賃貸人の負担すべき必要性を支出したときは、直ちに賃貸人に対して償還を請求することができる。また、賃借人が、賃借物の改良、価値の増加のために支出する費用を支出したときは、賃貸人は、賃貸終了時に、その償還をしなければならない。その額は建物の価値が現存している場合に限り、実際の支出額または価値増加分になる。
  賃借人は、賃貸借契約が終了した場合、賃貸人から必要費が償還されるまで留置権を行使して建物の明け渡しを拒むこともできるとしている。
  賃借物の改良、価値の増加のために支出する費用を支出した場合にも、賃貸借契約が終了した時点で、留置権を行使することができる。このように賃借人の必要費および賃借物の改良、価値の増加のために支出する費用の請求権は、強い権利なのである。



(3)契約書の特約の解釈
  多くの建物賃貸契約書は、‘修繕費は賃借人の負担とする’という特約が記載されている。この特約について2つの最高裁判例が参考になる。
  1つは、昭和29年6月25日判決で、‘営業上必要なる修繕は賃借人においてこれをなすものとするとの契約条項につき、単に賃貸人の修繕義務の限界を定めただけでなく、賃借人にその営業上必要な範囲の修繕の義務を負担させた趣旨と解せるとした’というもの。2つめは、昭和43年1月25日判決で、‘修繕費を借主の負担とする特約は、原則として貸主の修繕義務を免除したことにとどまり借主に修繕義務を負わせる趣旨ではない’と判示している。
  したがって、特約で賃借人の修繕義務を規定してもかまわないが、賃貸人は修繕義務免除について制限があることが読み取れる。この点について名古屋地裁平成2年10月19日判決は、修繕義務を賃借人に負担させるためには‘合理的な理由’が必要であるとしている。たとえば、賃料が相場よりも著しく低額である場合やその建物の用途が賃借人でしかできない場合である。

(4)実務対応の留意点
  第1 賃貸物件に修繕等をした場合、負担すべき者は賃貸人なのか賃借人なのかを判断その判断は、その物件に係る契約書の‘特約’による。特約がなければ自動的に賃貸人の負担になる。ただし、修繕等の原因が故意または過失によって建物が損傷した場合には、特約とは無関係に賃借人が負担することになる。

  第2 特約の有効性を確認
  契約書に特約があれば賃借人に修繕義務を負わせることはできるが、それは必ずしも絶対的なものではない。したがって、‘合理的な理由’も検討した上で、特約を履行できるかを判断しなければならない。

  第3 賃貸借契約終了時の状況に注意する必要
  民法は修繕費等を必要費と賃借物の改良、価値の増加のために支出する費用に区別し、賃借物の改良、価値の増加のために支出する費用は賃貸借が終了した時点で賃借物の価値の増加が現存していることを償還の条件にしている。したがって、賃貸借終了時に賃借人が過去に支出した建物への価値増加分が滅失している場合は賃貸人へ賃借物の改良、価値の増加のために支出する費用を請求できないことになる。

(参考・引用 2014年6月15日号 税理士新聞 税論卓説)
スポンサーサイト

| 固定資産の税務及び会計 | 12:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント:

TRACKBACK URL

http://mukouyama.blog.fc2.com/tb.php/335-55c6cb3b

TRACKBACK

<< PREV | PAGE-SELECT | NEXT >>