税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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大企業における税務コンプライアンスの取組状況

 最近の日本経済新聞を見ていると税に関する特集記事が多く目を引く。
ここ一月ぐらい税に関する記事やグローバル企業の租税回避行為に関す事件が多く掲載されているようである。
2013年6月30日の朝刊1面では「TAX ウオーズ 上 」と題して富の分配をめぐり「企業と国」が争っているとの記事が出ている。

 
 記事では、米アップル社や米スターバックス社など、グローバル企業の「節税」対策が話題を集めている。税金の負担を軽くするために企業は知恵を絞っているのだが、国は本来払うべき金額を納めていない「税逃れ」だと指摘している。
租税回避行為を巡り企業と国が論争しているわけである。最近の記事は欧米企業の話題が中心であるが、これに対して、日本企業の活動に関してはあまり議論されていない。

「なぜだろうか?」

 この疑問を解く記事が1つ掲載されている。「TKC会報2013年7月号」で国税庁調査査察部 部長藤田博一氏が講演で述べている中に参考となる記述がある。
それを要約すると、国税当局は、大企業を中心とした税務コンプライアンス(法令順守)の維持・向上に向けた取組を重点において活動していくというものである。

一文を紹介すると、
全国国税局の調査部には特別国税調査官(略して特官)という部門がある。ここでは大企業を調査対象としている。
国税局へ税務申告している法人数は全国で約300万社あまりある。そのうち調査部所管法人は約3万社、そのうち特官所掌法人は約500社だ。これは法人数では全体の0.02%にすぎないが、申告所得金額は全法人(37兆円)の24%(9兆円)を占めている。

従って、大企業の税務コンプライアンスの状態が、その企業グループ全体、下請け中小企業を含めたその地域、業界団体の税務コンプライアンスに与える影響が大きいということである。
特官では平均5人で調査班を構成し、3~6ヶ月ほどの調査を行っている。
この調査は2年に1度、3年に1度の法人もあるが、毎年調査を行う法人もあるという。つまりそれだけ国税当局も多くのマンパワーを投入し、多くの事務量を費やしていることになる。また他方、税務調査を受けている法人にも相当大きな負担を与えていることも確かである。
 国税当局は、大企業の税務コンプライアンスの維持・向上のために、2011年5月より日本経済団体連合会や法人会などの会合の都度説明会を実施し、広報活動をし、更に、全国国税局調査部の特官所掌法人の税務調査の機会に「税務に関するコーポレートガバナンス確認書」を配り状況把握をしている。
「確認書の内容は、

1.トップマネイジメントの関与・指導状況
2.経理・監査部門の体制・機能の整備状況
3.内部牽制の働く税務・会計処理手続きの整備状況
4.税務に関する情報の社内への周知状況
5.不適切な行為に対するペナルティの適用状況


上記の5項目を企業側に記入を求め、調査終了時にこの「確認書」に基づき各国税局幹部がトップマネイジメントと面談を行い、意見交換を行う取り組みをしているそうである。
そして、過去の調査履歴を総合的に勘案し「調査必要度が低い」と判断された法人に関しては調査間隔を延長するなどの対応をし始めているそうである。

 更に税務リスクの高い取引(納税者が課税当局と見解が相違する可能性の高い取引)の確認事項を事前に企業に出向いて情報収集を実施している。
最近、税務当局のこのような取り組みのせいか、大企業では目立った租税回避行為は見受けられなくなっているようにも思われる

 欧米諸国と違い、日本では上記のような税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組や対策を国税当局が行っている事が理由といえよう。

 世界経済はますますグローバル化へと進んでいる。それに伴い企業も多国籍化され全世界に拡散されていっている。もちろん日本企業も例外ではない。
今後は「国と国」、「企業と国」との富の奪い合いがより激しくなるにつれ、租税回避行為も増えてくるのではないだろうか。
その時日本の国税当局はどのような取組をするのであろうか。コンプライアンスだけでなく、国としての税制はもちろんだが、それ以外で企業が魅力を感じる環境を整えられるかが課題となってくるといえるのではないか。
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