税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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会計検査院調査による租税徴収不当事項の内容とは?

2012年(平成23年)度の会計検査院による調査報告書によると、租税徴収の不当事項が64税務署において、233,611,585円。
納税者合計で97件あったことが報告された事は前のブログで紹介したとおりである。
今回はこの不当事項の具体的内容を税目毎に見ていきたい。

Ⅰ.税目ごとの態様
 この97件とは、源泉所得税2件、申告所得税20件、法人税63件、相続税・贈与税5件、消費税5件、その他過大徴収2件に分けられる。そして、その税目毎の態様を示すと以下のとおりである。
1 源泉所得税
 源泉所得税に関して徴収不足になっていた事態が2事項あった。これらは、報酬及び配当に関する事態である。
 報酬及び配当の支払者は、支払の際に、所定の方法により計算した源泉所得税を徴収して、徴収の日の属する月の翌月10日までに国に納付しなければならないこととなっている。そして、この法定納期限までに納付がない場合には、税務署は支払者に対して納税の告知をしなければならないこととなっている。
 この報酬及び配当に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計5,083,485円あった。その内容は、報酬の支払額や自己株式の取得による配当とみなされる金額について、法定納期限を経過した後も長期間にわたって源泉所得税が納付されていないのに、課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、納税の告知をしていなかったものである。

2 申告所得税
 申告所得税に関して徴収不足になっていた事態が20事項あった。この内訳は、譲渡所得に関する事態が11事項、不動産所得に関する事態が7事項及びその他に関する事態が2事項である。

(1) 譲渡所得に関する事態
 個人が資産を譲渡した場合には、その総収入金額から譲渡した資産の取得費や譲渡に要した費用の額等を差し引いた金額を譲渡所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。ただし、土地建物等の譲渡による所得については、他の所得と分離して課税することとなっている(これを分離課税という)。そして、個人が相続又は遺贈により取得した資産を一定の期間内に譲渡した場合には、相続税額のうち所定の方法により計算した金額を、当該譲渡した資産に係る譲渡利益金額を超えない範囲で取得費に加算する特例を適用できることとなっている。
 この譲渡所得に関して、徴収不足になっていた事態が11事項計30,868,800円あった。その主な内容は、取得費に加算できる相続税額を過大に計上しているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったりしたため、譲渡所得の金額を過小のままとしていたものであった。

(2) 不動産所得に関する事態
 個人が不動産を貸し付けた場合には、その総収入金額から必要経費等を差し引いた金額を不動産所得として、他の各種所得と総合して課税することとなっている。そして、貸付けの用に供する不動産を取得する際に支払った仲介手数料は、その取得した不動産の取得価額に含め、不動産所得の計算上必要経費に算入しないこととなっている。
 この不動産所得に関して、徴収不足になっていた事態が7事項計17,896,300円あった。その主な内容は、申告書等で、貸付けの用に供した不動産の取得価額に含めるべき仲介手数料が必要経費に算入されているのに、これを見過ごしたため、不動産所得の金額を過小のままとしていたものであった。

(3) その他に関する事態
 上記のほか、事業所得に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計12,512,800円あった。

3 法人税
 法人税に関しては徴収不足又は徴収過大になっていた事態が64事項あった。この内訳は、法人税額の特別控除に関する事態が25事項、減価償却費の計算に関する事態が6事項及びその他に関する事態が33事項である。

(1) 法人税額の特別控除に関する事態
 法人税額から一定の金額を控除する各種の特別控除が設けられている。このうち、青色申告書を提出する資本金又は出資金の額が3000万円以下の中小企業者等(以下「特定中小企業者等」という。)が特定の機械等を取得して事業の用に供した場合には、その事業年度において、当該事業年度の法人税額の100分の20相当額を限度として、取得価額に一定の割合を乗じた金額を法人税額から控除できることとなっている。
 また、青色申告書を提出する法人に損金の額に算入した試験研究費がある場合には、当該事業年度の法人税額の100分の20相当額等を限度として、試験研究費に一定の割合を乗じた金額(以下「税額控除限度額」という。)を法人税額から控除できることとなっている。そして、前事業年度において控除できなかった税額控除限度額があるときには、当該事業年度の試験研究費の額が前事業年度の試験研究費の額を超える場合において、当該事業年度に繰り越して控除できることなどとなっている。
 この法人税額の特別控除に関して、徴収不足になっていた事態が25事項計73,431,700円あった。その主な内容は、次のとおりである
(A) 資本金の額が3000万円を超えていて特定中小企業者等に該当しない法人が特定中小企業者等が機械等を取得して事業の用に供した場合の法人税額の特別控除を行っているのに、これを見過ごしたため、法人税額を過小のままとしていた。
(B) 試験研究費の額が前事業年度の試験研究費の額を超えていないのに前事業年度から繰り越した税額控除限度額を誤って控除していたり、控除できない前々事業年度から繰り越した税額控除限度額を誤って控除していたりしているのに、これを見過ごしたり、法令等の適用の検討が十分でなかったりしたため、法人税額を過小のままとしていた。

(2) 減価償却費の計算に関する事態
 法人がその有する減価償却資産につき償却費として経理をした金額のうち、その法人が当該資産について定められた償却の方法に基づき当該資産の耐用年数等に応じて計算した金額に達するまでの金額は、所得の金額の計算上、損金の額に算入されることとなっている。そして、10年4月1日以後に取得した建物についての償却の方法は定額法で行うこととなっている。
 この減価償却費の計算に関して、徴収不足になっていた事態が6事項計26,488,200円あった。その主な内容は、法人が10年4月1日以後に取得した建物の償却の方法を誤り、償却費を過大に計上しているのに、これを見過ごしたため、損金算入額を過大のままとしていたものであった。

(3) その他に関する事態
 上記のほか、役員給与の損金不算入、同族会社の留保金等に関して、徴収不足になっていた事態が32事項計46,755,600円、徴収過大になっていた事態が1事項500,000円あった。

4 相続税・贈与税
 相続税・贈与税に関して徴収不足になっていた事態は5事項ある。この内訳は、相続税については土地建物等の価額に関する事態が2事項及びその他に関する事態が2事項、贈与税については土地建物等の価額に関する事態が1事項である。

(1) 相続税
(ア) 土地建物等の価額に関する事態
 個人が相続又は遺贈により財産を取得した場合には、その取得した財産に対して相続税を課することとなっており、取得した財産の価額は相続又は遺贈により取得した時の時価とされていて、土地建物等の価額については路線価、固定資産税評価額等を基にして計算することとなっている。そして、正面と側方に路線がある宅地(以下「角地」という。)の場合は、それぞれの路線の路線価に奥行距離等に応じた補正率(以下「奥行価格補正率」という。)を乗じた金額の高い方の路線の路線価を正面路線の路線価(以下「正面路線価」という。)とするなどして評価することとなっている。
 この土地建物等の価額に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計8,899,200円あった。その内容は、土地の価額の評価において、取得した持分を誤っていたり、角地の正面路線価を誤っていたりなどして評価しているのに、これを見過ごしたため、土地の価額を過小のままとしていたものである。
(イ) その他に関する事態
 上記(ア)のほか、相続税額の加算及び有価証券の価額に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計1,722,200円あった。

(2) 贈与税
 個人が贈与により財産を取得した場合には、その取得した財産に対し贈与税を課することとなっている。
 この贈与税に関して、徴収不足になっていた事態が1事項3,074,500円あった。その内容は、贈与により取得した土地の一部が申告されていないのに、課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、課税していなかったものである。

5 消費税
 消費税に関して徴収不足又は徴収過大になっていた事態が6事項あった。この内訳は、課税売上高の計上に関する事態が2事項及びその他に関する事態が4事項である。
(1) 課税売上高の計上に関する事態
 事業者は、課税の対象となる国内において行った資産の譲渡及び貸付け並びに請負等の役務の提供に係る収入金額を課税売上高に計上することとなっている。
 この課税売上高の計上に関して、徴収不足になっていた事態が2事項計3,483,900円あった。その内容は、事業者が事業用建物を譲渡しているのに、課税資料の収集及び活用が的確でなかったため、課税売上高を過小のままとしていたものである。
(2) その他に関する事態
 上記(1)のほか、課税仕入れに係る消費税額の控除等に関して、徴収不足になっていた事態が3事項計3,394,900円、徴収過大になっていた事態が1事項1,030,700円あった。

 このように課税庁側といえども課税及び徴収の間違いがある。
よく確認しなくてはいけない。それにしても会計検査官の細かな調査及びその広範囲な税務知識の深さには驚くばかりである。
租税だけに着目するとこの不当事項97件、税額で233,611,585円は、我々職業会計人が関与している企業の申告誤りを課税庁側も見過ごしている点である。
我々職業会計人が注意をし、間違えさえしなければ無くなるはずである。そういう意味ではこの報告書は我々にとって反面教師の役割を担っているようにも思われる。

                            
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