税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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国外財産調書制度について その4

 今回は国外財産調書制度についての第4回目。
過去に「海外資産あぶり出し」(2012.2.13)「富裕層対象のアメとムチの国外財産調書制度」(2012.3.1)「最近の相続税調査による「海外資産の計上漏れ」問題」(2013.1.31)と制度に備えて解説してきた。

 国外財産調書制度(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」が根拠法)がいよいよ開始である。
課税当局の待望の制度である。
提出期限まであと1年今から準備しておきたい


 2013年(平成25年)度税制改正大綱では、所得税の最高税率45%の創設や相続税の最高税率が55%に引き上げられるなど、いわゆる「富裕層」や「資産家」を直撃する内容が目立った。消費増税による「低所得者層」の不満を逸らす目的があるとはいえ、やはり不公平感は拭えない。そして、さらに資産家の懐事情に目を光らせるのが国外財産調書制度の創設だ。まるで資産家=脱税予備軍のような扱いを苦々しく思っている人も少なくないだろうが、まずは痛くもない腹を探られないよう、制度はしっかり理解しておきたい。
 国外財産調書制度とは、12月31日時点で合計5千万円以上の国外資産を持っている日本の居住者は、国外財産調書を作成して翌年3月15日までに所轄の税務署に提出しなければならないという制度だ。平成24年度税制改正法案成立により制定された。


 国内資産家の海外資産が増加したことに伴って所得税や相続税の申告漏れ件数も高まり、さらに資産の海外逃避スキームの複雑化などで当局が資産を把握できないということが導入の理由に挙げられている。さらに租税条約締結国であっても相手国内にある資産情報を完全に把握することは困難であるという現状から、本人による自己申告を罰則付きで整えたものだ。「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」が根拠法となっている。
適用は「平成24年1月1日以降提出分から」であるため、今年末時点の財産調書を来年(26年)の3月に提出するのが初回ということになる。
提出期限までは1年以上あるとはいえ、基本だけはきちんと抑えておきたい。

 まず、ここでいう提出義務のある「日本の居住者」とは、所得税法上の「居住者」と同意で、原則として日本に「生活の本拠」としての家があるか、もしくは継続して1年以上にわたり日本に「居所」がある個人を指し、法人は含まれない。なお、居住者であっても日本に住む期間の短い外国人は対象から外される。ここで注意したいのは、「日本の居住者」には年齢制限がないことだ。たとえ未成年であっても、相続などで国外資産を得て所有している場合は調書の提出義務があるので「周囲の大人」が教えてあげないと「罰則」をちらつかせられながら、それこそ痛くもない腹を探られることにもなりかねない。
その罰則だが、過少申告加算税と無申告加算税の特例が設けられ、国外財産について所得の申告漏れがあった場合、提出した調書に当該財産の記載があれば過少申告加算税および無申告加算税は5%軽減される。逆に調書に記載がなければ5%の加重となる。さらに、虚偽記載や不提出には1年以下の懲役または50万円以下の罰金が定められた。
これまで、所得税法でも年間所得が2千万円を越える者には、確定申告期に財産債務明細書への記載・提出が義務付けられてはいた。しかし、そこには罰則規定がないため、「未提出者にも強制はできず、せいぜい提出要請の葉書を出すくらいしか為す術を持たなかった」(国税OBの税理士)という時代もあったようだ。最近は提出を何度も催促し、不適切なら訂正を求めることもあるようだが、それでも「罰則のないルールには限界がある」(同)という。そこで、優遇措置(アメ)と加罰措置(ムチ)を設けた新制度の登場となったのである。

 このように、虚偽記載と同様に未提出にも重い罰則が課せられるのだが、「つい、うっかり」といった提出忘れには実は寛大な処置がある。提出期限(翌年3月15日)を過ぎてしまった場合でも、それが「税務調査によって更正または決定を予知して提出したもの」でなければ、期限内提出として取り扱われるのである。国外資産が5千万円を超えたことを忘れてしまったり、財産価額の算定ミスに気が付いたりしたときにも、慌てずに申告すればいい。
次に、財産の範囲を見ておきたい。国外にある資産といっても資産の形はさまざまだ。まず土地や建物なら所在地で判定できるが、預金の場合は、「預けられている支店の所在地」によることになる。その中身がドルでもユーロでも円でも関係なく、日本の銀行のロンドン支店なら国外財産、外資系バンクの東京支店なら国内資産となる。
そして社債や株式などは、発行した法人の本店所在地で判定される。例えば横浜にある証券会社からパリに本店を置く会社の発行した株式を購入した場合、これは国外財産として扱われる。同様に、国債や地方債についても外国債は日本国内で買っても国外財産である。さらに特許権なども登録地が財産所在地とされるので、抜け落ち(記載漏れ)のないように注意したい。

 世界に分散した資産の価額を洗い出すのは楽な作業ではない。「大した金額ではない」と思っても、合計すれば5千万円に至る資産家は決して少なくないはずだ。また、資産の把握や価額の洗い出しにはそれなりの費用も生じるだろう。絵画などの美術品や骨董品は、転売目的でない限りは明確や価額は把握していないことも多いはずだ。それなりの鑑定費用も覚悟しなければならない。
 国税OBの税理士によると、「本制度に基づく調査で税収を上げようという魂胆はないにしろ、国外資産と所得の把握には役立つでしょう」とのことだ。たしかに、一般の納税者にとって、罰則覚悟で提出を拒否することは難しい。では、痛くもない腹を探られないためにはどうすればいいか。
この国税OB税理士は、「少なくとも税務署に何か隠しているという印象を与えないことです」と語る。「特に、これまで財産債務明細書をいい加減に提出していた人は注意が必要です。例えば海外に預金がある場合、〝国内預金は三井住友銀行と、その他の銀行に○○百万円〟というのではなく、実際に海外に預金があれば「シティバンク○○百万円」などと書く必要はあるかと思います。その場合、海外に預金があって利子所得の申告がないとおかしいので注意してください」と、とにかくアバウトにでも記載して提出しておくことを勧める。
重い罰則をちらつかせて丸裸にされることは、善良な納税者として決して楽しいことではない。しかし国外資産による収益の実態把握がこれまで不十分すぎたのは事実だ。同時に、国税庁としては、かつてのように「強きを助け、弱気をくじく」スタイルは今日の格差社会で取ることは難しく、富裕層にもきちんと調査しているという姿勢(スタンス)が求められている世相が、本制度導入の背景にあることは確かだ。どこをどう探られようとも痛くない腹でありたい。

NP通信社新聞記事参照


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