税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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課税処分における信義則違反について

 税務職員が税務相談などで行った説明や指導、助言などの通り納税者が確定申告をしたとしても、その内容に誤りがあったことが判明した場合、追徴課税される恐れがある。この場合「税務職員の誤った指導が原因だ」としても、裁判所で追徴課税の違法性を争うことが難しくなっている。
鳥飼総合法律事務所の弁護士木山泰嗣氏によると、この信義則の適用について厳しく考える最高裁判例があるためであるとしている。

 今回の事例では、現在、課税庁側の更正処分に対し「論理の一貫性に矛盾」があると考え、異議申し立てをしている事案である。

(1)当方の主張 
  まず、課税庁の論理の一貫性として矛盾について次の事項をあげて述べる。

1. 本件については、過去に2回の調査を受け、10年間消費税の還付が実質行われてきたことの事実は、どう課税庁は、考えるのか、
 具体的には、消費税に関して平成12年事業年度から平成16年事業年度(過去5年分)について更正の請求(以下「第1次更正の請求」という。)を経て、その後調査を経て、旅行売上が輸出免税に当たるとして旅行売上と旅行原価の差額部分について消費税の還付が決定し実施された。
 平成17年分と平成18年分については、前者を受けて還付申告を行い、還付された。
 平成19年分については、旅行売上はあくまで消費税7条、令17条に基づく輸出免税であり、それに対応する旅行原価は、消費税の対象となるべく原価と主張し、更正の請求をした。(以下「第2次更正の請求」という。)。 その後調査の結果、認められ還付がされた。
これを受けて平成20年から平成22年分まで毎年還付申告をし、還付されてきた。平成23年分において調査が行われたが、更正処分の前に一旦消費税は還付された。上記のように請求人の主張により通則法第23条1項に基づき、2回にわたり、課税庁の公的見解の指導を受けて、それに対応した申告をしていた。
 本件において、平成16年分の第1次更正の請求及び平成19年分の第2次更正の請求に請求人主張とおり還付された事実は、後記記載の最高裁判決の「特別の事情が存する」と解釈される。
   
2. 前記のような経過事実から3年間(平成21年分、平成22年分、平成23年分)については、更正処分を受け、還付金額を遡って消費税の返還請求をされ、延滞税を課税していること。これは、納税者が経済的不利益を被ることになるものであり、とうてい了承できるものではないこと。
  
3.次に最高裁の判例を考えてみる。
1987年10月30日の最高裁判決要旨(以下、「最高裁判決」という。)より、
 「租税法規に適合する課税処分について、法の一般原理である信義則の法理の適用により、右課税処分を違法なものとして取り消すことができる場合があるとしても、法律による行政の原理なかんずく租税法律主義の原則が貫かれるべき租税法律関係においては右法理の適用については慎重でなければならず、租税法規の適用における納税者間の平等、公平という要請を犠牲にしてもなお当該課税処分に係る課税を免れしめて納税者の信頼を保護しなければ正義に反するといえるような特別の事情が存する場合に初めて右法理の適用の是非を考えるべきもの。そして、以下、特別の事情が存するかどうかの判断に当たっては、少なくとも、以下の点の考慮が不可決のものである」としている。

①税務官庁が納税者に対し信頼の対象となる公的見解を表示したこと。
②納税者が税務官庁の当該表示を信頼し、その信頼に基づいて行動したこと。
③後に当該表示に反する課税処分が行われたこと。
④そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであること。
⑤納税者が税務官庁の以下の表示を信頼しその信頼に基づいて行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないこと
 つまり、この当該判決は、次のことを言っている。
①課税処分に信義則が適用される場合もある。
②ただし、課税処分に信義則が適用されるためには、上記の5つをすべて満たしたときに適用できる、というものである。

 しかし、①の公的見解はあいまいなものであり、何なのかはっきりしていない。
また、この事案は、口頭での指導等ではなく、一般調査をした上での更正処分をしたものについて、税務官庁を信頼し、その信頼に基づいて申告という行動を行ってきたものである。
さらに、税務大学校 租税理論研究室助教授の品川芳宣教授の論文「税法における信義則の適用について」より引用させて頂き、信義則の適用と租税法律主義について述べる。
  「信義則が今や単なる私法上の原理にとどまらず、すべての法律関係を支配する一般原理とされ、行政法上にも適用されるべきであるということは、わが国においてもすでに通説となってきている。この場合、信義則の適用が行政法上においても妥当するとする理論的根拠としては、信義則の規定はたまたま民法典に規定されているが、この原則は何も純私法的なものでなく、私法公法共通の法の一般原理として解されるものであるから、この原則は行政法上にも直接適用されるとする説が有力である」。
  以上のように信義則が法の一般原理として行政法上においても適用しうるとする論拠は、行政法の一分野である税法上においても適用しうるとする論拠にもなり得る。     
租税の徴収及び賦課は、必ず法律の根拠に基づき、法律に従って行わなければならないとする憲法84条に規定されている租税法律主義によっている。これは、国民の財産を保護し、法律生活の安定をはかることを目的とする。すなわち、課税要件法定主義ならびに課税要件明確主義の2点を内容とする。
  前者は、「納税義務者・課税物件・課税標準・税率等の各種の課税要件のほか、租税の賦課・徴収の賦課は法律で定めなければならない」というものであり、また後者は、「課税要件は明確に定めなければならず、行政権の自由裁量を認めるとか不確定概念を用いることは原則として許されない」というものである。

 以上のことから、本件に関しては、税務官庁の更正処分について論理の一貫性が通されてなく、納税者に対する租税法律主義において正義を貫く上でも、本件の消費税還付についての更正処分は先に述べた事実経過を踏まえて特別の事情が存すると考えて、不当な更正処分である。

今後この事案に関して課税庁側がどのような反駁をしてくるのか。
今後、当ブログで順次報告していきたい。



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