税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業44年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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相続手続きが簡素化

相続手続きが簡素化
-戸籍情報を証明書1枚に


前回(2016年7月12日掲載)は民法改正(相続編)に関しての見直し案が出ている事を述べましたが、今回は遺産相続の手続きを簡素化する改正案が検討されていることが、2016年7月5日法務省の発表で判明しました。
これは、税理士・司法書士・弁護士等実務家にとっては業務に関わる重要な改正内容でもあるので注目したい情報でもあります。
その内容は、煩雑だった相続手続きを簡素化する「法定相続情報証明制度」(仮称)の運用を2017年5月を目途に目指すとのことだ。
現在、親や配偶者が死亡した場合、相続人は不動産登記の変更や相続税の申告、銀行口座の解約などのため、大量の戸籍書類一式を相続対象となる不動産を管轄する各法務局や預金などのある金融機関ごとに提出する必要がある。そして提出を受けた法務局や金融機関も、申請者が正当な相続人であるかを審査し、さらに遺産が多岐にわたる場合は同様の手続きを複数の法務局や金融機関で行わなければならない。

(新制度の内容)
相続が発生した場合、まず相続人の一人が全員分の本籍、住所、生年月日、続柄、法定相続分などを記載した申請書類を作り、相続人全員分の戸籍と亡くなった人の戸籍をそろえて法務局に提出する。
法務局が正当な相続人であるかを審査した後、提出を受けた相続人一覧を基にして証明書を完成させ、公的な証明書として法務局が保管し、相続人には「写し」を発行する。これによって相続人は、この「写し」を相続手続きを行う法務局や金融機関に証明書として提出するだけでよくなる。そしてこの証明書は別の法務局でも使えるため、地方の不動産などを相続する場合負担軽減につながると期待されている。
(今後の動き)
この制度は年内にパブリックコメント(意見公募)を実施して詳細を決めてから実施することになる。法改正を含め、早ければ来年5月に実施したいとの考えであるという。
その他、今年1月からスタートしたマイナンバー制度であるが、当初の大騒ぎから半年経ち、最近では余りマイナンバー制度の話を聞くことが無いようである。まだ我々の生活の中に浸透しきっていないからだろうか?
しかし行政側ではマイナンバー法の一部を改正するなどし、粛々と「国民総背番号制」への移行は進んで行っている。一例として、金融機関の預金口座とマイナンバーの紐付も2018年からは実行される方向で進んでいる。これなども、今後相続手続きの簡素化にもなろう。
ただし、国民の情報がIT化され便利になるという事は、反面「国」が国民の情報を把握してしまう事でもある。良し悪しは別にして、相続及び相続税の面では、利便性が高くなり、税の申告漏れも少なり税収増には役立つだろう。
                              

                  参照資料 日本経済新聞2016.7.6電子版
                       NP通信社「納税通信」第3431号
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| 民法・商法・会社法 | 09:27 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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相続法の改正が検討中

             民法改正第二弾!!     
           ―相続法の改正が検討中―

 債権法の民法改正案が閣議決定されたのは、2015年3月31日のことでした。当時120年ぶりの民法改正案という事もあり、かなり注目があったことを思い出します。
あれから1年、民法改正は相続編に移行しています。
2016年6月21日、法務大臣の諮問機関である「民法の相続分野の見直しを議論する法制審議会」の部会が行われ、今度は相続法の改正について、中間試案をまとめ発表しています。
ここで注意していただきたいのは、相続法と相続税法との違いです。
民法上の相続法は第882条~1044条までで構成されています。その内容は、相続人とはだれか、相続の効用、相続の承認及び放棄、財産分離、遺言及び遺留分などの説明が体系的に条文化されています。
これに対し相続税法はあくまでも人の死亡に起因した、「相続」が発生した場合の国に納める「税」の計算を出すための法律です。
2015年1月からは相続税法の大幅な改正がありました。皆さんご存知の基礎控除額が5000万→3000万。1人当りの控除金額500万→300万。そして、相続税率の上限が全体で5%アップされ最高税率55%になるなど重税感がありました。

今回の民法相続編の改正ポイントは以下の通りです。
 配偶者の相続分の見直し
配偶者の法定相続分は1980年に3分の1から2分の1に引き上げられて以来36年間変更されていない。
 結婚して一定期間(20~30年)過ぎた場合、遺産分割で配偶者の法定相続分を2分の1から3分の2に引き上げる。
 結婚後に所有財産が一定額以上増えた場合その割合に応じて増やす。
2 配偶者に「居住権」の新設
 亡くなった夫が遺言で自宅を第三者に贈与しても、妻に住み続ける「居住権」の権利を与える。
 介護・看病に「見返り」
相続人以外の人が介護や看病で献身的な貢献をした場合、相続人に金銭を要求できる。
現行では、例えば長男の妻が介護した義父母の財産を相続する権利は無いが、妻が相続人である長男らに対して金銭の請求を出来るようにする。金額が協議で決まらない場合は家庭裁判所が決める。

4 自筆遺言の形式緩和
遺言制度の利用を促進する為、全文を自筆で作成する「自筆証書遺言」を緩和。財産目録はパソコンで作ることが出来るようにする。    
 
現在7月~9月にかけて行われるパブリックコメントを経て、さらに部会での議論を尽くすことになります。その経過の中で内容の変更削除もあると思われるが、来年の臨時国会には民法改正案を提出する見通しであるといわれています。
民法改正は我々の日常の生活と密接に関わっています。従って、今後の動向に目が離せません。

                                


                  参照:2016年6月22日朝刊日本経済新聞

| 相続税及び贈与税 | 12:29 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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任意売却と差押解除

今回は、任意売却と差押解除について述べてみる。

(1)浜松市差押解除懈怠事件 
 ①平成26年9月8日の静岡地裁浜松支部における判決
  (事案)
 国民健康保険料を滞納していたAさん(原告はAの相続人X)の不動産を差し押さえていた浜松市(Y)に、当該不動産の任意売却を行うためにXが差押えの解除をYに求めたが、拒否されたため、任意売却より低額な競売手続きで当該不動産が売却され損害を受けたとして国家賠償を求めたものである。
 静岡地裁浜松支部はXの申し出を認め110万円の損害賠償金の支払いをYに命じた。通常公売や競売の売却価格は市場価格の2割落ちであり、その損害は大きい。

  ②無益な差押え
 この事案ではなぜ国家賠償が認められたのであろうか。国税徴収法は79条第1項において‘差押えを解除しなければならない’事由を定めている。
 1つは納付や充当、課税の取り消し等で国税の全額が消滅したときである
 2つめは無益な差押えである。本件の場合、任意売却価格が678万円で、優先債権の元金が1928万円余りあり、明らかに租税債権の徴収は不可能であった。しかも同79条第1項第2号は、その文言からして効果裁量を認めたものとして解せない。客観的に差押解除義務が生じていた以上は、執行庁納税者の求めに応じて差押えの解除をしなければならないことになっている。
 徴収職員は差押え解除義務があるにもかかわらず、職務上通常尽くすべき注意義務を怠り、認定判断を漫然とおこなった結果として差押え解除義務を怠ったということが問題となる。

  ③税理士が注意すべき点
 最近の租税徴収義務において、執行庁がおこなっているのは売掛金等の入金を考慮して預金の差押えが行われている。現に国税徴収法基本通達47-17は差し押さえる財産の選択は裁量によるとしているにもかかわらず、滞納者の申し出の財産を差し押さえるよう指示しているのです。
 さらに滞納者の生活の維持または事業の継続に与える支障のない少ない財産であることも指示している。しかし、現実はこの通達は守られていない。上記の事案で問題となった、無益な差押えは国税徴収法48条2項により行うことはできない。しかし実務上は、時効の中断を目的とした差押えや、金融機関や納税者の債権者への波及効果を狙って行われている行為の報告もある。
 現に普通預金が0円になっていて、資金繰りに困った事例を見ている。社長が銀行に出向き確認したら差押えで預金が0円になっていた事例である。
 徴税職員は、差押え予告は再三してきたといっていたそうだが、社長はまったくその連絡は受けていないそうだ。
 もっと改正された審査請求手続きを考慮して、厳重に抗議する等納税者の権利を守っていくべきだと思う。
 上記の事案にしても優先部分の租税を納付する旨の申し出を行っても全額納付がなければ解除しない等の税務官署の一方的な対応を問題視して、適切な税務運営を行うように提言及び意思発信する必要があると考える。

(参考)国税徴収法 第79条
(差押えの解除の要件)
第七十九条  徴収職員は、次の各号のいずれかに該当するときは、差押えを解除しなければならない。
一 納付、充当、更正の取消その他の理由により差押えに係る国税の全額が消滅したとき。
二 差押財産の価額がその差押えに係る滞納処分費及び差押えに係る国税に先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を超える見込みがなくなったとき。
2 徴収職員は、次の各号のいずれかに該当するときは、差押財産の全部又は一部について、その差押えを解除することができる。
一 差押えに係る国税の一部の納付、充当、更正の一部の取消、差押財産の値上りその他の理由により、その価額が差押えに係る国税及びこれに先立つ他の国税、地方税その他の債権の合計額を著しく超過すると認められるに至つたとき。
二 滞納者が他に差し押さえることができる適当な財産を提供した場合において、その財産を差し押さえたとき。
三 差押財産について、三回公売に付しても入札又は競り売りに係る買受けの申込み(以下「入札等」という。)がなかつた場合において、その差押財産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に公売に付しても買受人がないと認められ、かつ、随意契約による売却の見込みがないと認められるとき。

(参考・引用:税理士新聞 第1522号、国税徴収法、国税徴収法基本通達)

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