税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業44年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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軽減税率は本当に低所得者への救世主?

 消費税10%引上げ時の軽減税率導入目指し新たな動き

 自民党税制調査会は10月16日に会合を開き、消費税10%増税と同時に軽減税率導入に向けた具体的な制度設計に着手しました。
 増税時の消費税の軽減税率制度については、平成27年度税制改正大綱で、関係事業者を含む国民の理解を受けた上で税率10%時に導入することが今後の方針と記載され、平成9年4月1日からの導入を目指して対象品目、区分経理、安定財源等について、早急に具体的な検討を進めることとされています。

(1)消費税軽減税率のこれまでの動き
 これまで、自民党と公明党は与党税制協議会において、軽減税率の対象品目について、食料品を例に「全ての飲食料品」から「精米のみ」までの8案を示してきました。すべてが標準税率の場合に比べ、少なくなる消費税収は、1%軽減されるごとに6,600億~200億円と見込まれています。

 また、自民、公明両党は、5月22日に第2回目の軽減税率検討委員会の会合を開き、軽減税率対象品目について財務省が示した3案をたたき台に議論し、今秋の取りまとめを目指す方針を示しました。しかし、財政再建のための税収確保を重視する自民党と低所得者層の負担軽減効果を重視する公明党で対象の範囲について意見の相違がありますし、軽減税率導入時期についても、10%への引き上げと同時を目指す公明党と同時実施にこだわらない自民党というように与党間でも意見の取りまとめは難航することが予想され、今秋までの取りまとめは難しそうな様相でした。

 9月に入るとマイナンバーを利用した消費税還付金案が浮上しました。8%から10%の増税分の2%を「酒類を除く飲食料品」の購入時に「軽減ポイント」を付与し、消費者は関連サイトに申請して、消費者名義の口座に還付してもらうことになります。低所得者層の1年間に消費する飲食料品の金額(年間200万円)を参考にその2%の4千円を上限とする案が出されました。ただし、所得制限については今後の課題とした上で今回は設けられませんでした。

(2)当初の8案の再検討、インボイス導入見送り
 10月16日の自民党税制調査会は、阿部晋三首相が14日に2017年4月の消費税率10%への引上げと同時に軽減税率の導入を指示を受けての会合であり、税制調査会長が軽減税率導入に慎重な野田毅氏から宮沢洋一氏に代わってからの初会合でもありました。
 会合では以下の内容が話し合われ、会合後に宮沢税制調査会長は、「社会に混乱を起こすものであってはならない」ことを強調しました。
 ◎ 消費税増税分の還付制度案については検討を撤回したこと。
 ◎ 対象品目についてはいち早く決める必要があり、当初の8つの案立ち返って再         
   検討すること。
 ◎ 「インボイス」方式については今回の採用は見送り、数年後をめどに導入する方
   向で検討すること。
 ◎ 来週にも与党税制協議会を開き、軽減税率導入に向けた制度設計の議論を加速さ
   せること。

(2)軽減税率は本当は高額所得者の方が有利な制度
 エンゲル係数が生活水準を図る上で使われていますが、エンゲル係数は家計の消費支出総額中に占める食料費の割合で、一般的にエンゲル係数が高いほど生活水準が低いとされています。2014年サラリーマン世帯のエンゲル係数は年収200万円以下の世帯では28.5%もありますが、年収1,500万円以上の世帯では19.2%でした。パーセンテージのみを見ると一見数値が大きい低所得者層に軽減税率の恩恵がありそうにも見えるのですが...
 今度は金額で比較をしてみます。年収1,500万円以上の世帯の食費は毎月10万2,538円で、年収200万円以下の世帯では食費は3万7,978円です。食費に対して2%の軽減税率による減税額を計算すると、年収1,500万円の世帯では2万4,600円になるのに対して年収200万円の世帯だは9,114円にとどまることになり、金額で比較すると高額所得者のほうがより有利な制度なのです。

(3)逆進性だけを考慮すれば、マイナンバーの還付が効果的
 今回は上限金額のみが設けられ、所得制限は今後の課題として設けられませんでしたが、高額所得者がどれほど多くの食品を購入しても上限が決まっていますし、今後所得制限を設けて還付金額を減額したり、ゼロにすることで低所得者層に有利な制度となります。

 安倍首相の指示から軽減税率導入の動きが加速し始めました。
 対象品目について公明党は「酒類を除く飲食料品と新聞、出版物」か、そこから外食を除いた案を提案しており、与党間でも自民党はまず公明党との調整が必要となっています。
 また、対象品目の範囲を広げれば、税収が減りますし、狭めれば線引きが難しくなります。
 減税に対する代替財源をどうするか、消費税は社会保障に充てられるもの。消費税の減収は社会保障費の減額に繋がるのです。
 また、事務負担の面から事業者からの根強い反対の声もあります。
 このような状況の中でも、与党は11月末をめどに制度の詳細を固め、年末に取りまとめる28年度税制改正大綱に具体策を盛り込むことにしているのです。

     参考資料 産経新聞 2015年10月17日 7時55分配信
          SankeiBiz 2015年10月17日 8時15分配信           
          東洋経済オンライン 2015年10月17日 6時0分配信 
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「小規模企業白書」

「小規模企業白書」をご存知ですか?

  皆さんは、「小規模企業白書」をご存知でしょうか。毎年4月に中小企業庁が出している「中小企業白書」ではありません。実は今年の7月に初めて発行された中小企業庁編集の「白書」なのです。
第186回通常国会において2014年6月20日に「小規模企業振興基本法(小規模基本法)及び「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の一部を改正する法律(小規模支援法)が成立しました。これに基づいて2015年7月31日に第1回目となる「小規模企業白書」が発行されたわけです。
まず、小規模事業者の法律上の位置づけですが、「小規模事業者」とはおおむね常時使用する従業員の数が20人(商業又はサービス業は5人)以下の事業者と規定されています。そして新たに、常時使用する従業員の数が5人以下の事業者を「小企業者」とも規定しています。        (中小企業基本法第2-5.及び小規模振興基本法第2-1)

1、小規模事業者の実態
それではまず日本国内に存在する、法人・個人を含めた事業者数(社ではない)はどれほどあるのでしょうか。
小規模事業白書によると日本全体での事業者数は386.4万者あり、その内小規模事業者334万者(全体の86.5%)、中規模企業51万者(13.2%)。大企業1万者(0.3%)と圧倒的に小規模事業者が多いことが分かります。
では従業者数ではどうでしょうか? 現在、日本全体では4614万人の人々が就労しています。その内小規模事業者では、1192万人(全体の25.8%)、中規模企業者では2024万人(43.8%)、大企業では1397万人(30.3%)という構成になっています。小規模事業者は、日本経済の中で非常に大きな割合を占めていることが分かります。 従って、小規模事業者を活性化することにより日本経済全体を明るくすることにもつながるわけです。

2、「小規模企業白書」の内容
初版本である小規模企業白書は全体を2部構成でまとめてあります。
まず第一部では、政府統計を活用し従来詳細に分析されなかった小規模事業者の多様性や業種別の事業者の規模感を俯瞰するとともに、現在事業を営んでいる経営者を対象に実施したアンケート調査に基づいて、人材・資金・事業引継等、様々な角度から見た実態に迫っています。

また、注目は第二部です。
小規模事業者は、様々な構造変化の影響を受けやすく、経営層の高齢化や後継者不足など、様々な課題に直面しています。このような環境下で、経営者のたくましさと創意工夫により、現在事業を営んでいる小規模事業者の具体的な実例を42事例紹介し、様々な業種の様々な取組方をしていることを説明しています。皆さんが参考すべき記事が入っていると確信しています。
白書の中には開業間もない税理士の記事も掲載されていました。同業者の奮闘ぶりを見ると、「初心忘れるべからず」と再度気持ちを引締められる思いがしました。
そして最終ページでは、2014年度において講じた小規模企業施策の結果と2015年度において講じようとしている施策目標が掲げられています。これらの施策は、国が掲げた基本目標でもあります。従って、経営者の方々がこの制度を上手にうまく使わない手は有りません。
また、我々もこのような情報を収集し、必要としている方々に発信していかなくてはならないことを改めて考えさせられます。
  今後も経営者の皆さんに参考になる記事や、政府系の「白書」などが発行されたら、このブログで順次紹介していきます。



                        参考書籍:2015年版「小規模企業白書」中小企業庁

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