税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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空家等に対する増税と減税で空き家は減るのか?

     固定資産税の増税に加え、所得税の減税を検討中

 昨年11月27日に『空家等対策の推進に関する特別措置法』が公布され、本格的な空き家対策がスタートしました。この法律は16条の条文と附則から構成されており、この中で、「空家等」及び「特定空家等」の定義を定め、実体の調査やその対策として国及び市町村が行う政策が定められています。
 対策として注目するものは、、平成27年度税制改正により空家の固定資産税の増税と、平成28年度税制改正の要望事項である空家の除去やリフォームに掛かった費用の減税案です。

(1)平成27年度税制改正
1.内容
 特定空家等に係る土地について、住宅用地に係る固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例措置の対象から除外する措置を講ずるというものです。
2.課税標準の特例措置
 住宅用地については、税負担軽減の目的から課税標準の特例措置が設けられています。
  小規模住宅用地(住宅用地で200㎡以下)
     固定資産税  価格×1/6
     都市計画税  価格×1/3
  一般住宅地(小規模住宅用地以外=住宅用地で200㎡超)
     固定資産税  価格×1/3
     都市計画税  価格×2/3
3.特例対象から除外される特定空家等の範囲
 以下の状態にある空家等をいいます。
 ①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
 ②著しく衛生上有害となるおそれのある状態
 ③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
 ④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
4.背景
 空家が一向に減らない理由の一つが、空地と住宅の敷地では固定資産税が異なることです。このため、たとえ住まなくなっても固定資産税の安い住宅の敷地としておくため空家として放置してしまう傾向にありました。そこで、一定の空家に対して優遇措置をなくすことにより、空家にしておくメリットを失わせることです。

(2)平成28年度税制改正要望
1.制度名・税目
 国土交通省、住宅局、住宅総合整備課は、『空き家の発生を抑制するための特例措置の創設』という制度名の所得税の減税案を平成28年度税制改正要望に盛り込みました。
2.内容
 2016(平成28)年4月1日から一定期間内に、旧耐震基準も下で建築された居住用家屋(被相続人のみが居住しており、相続後、空き家になった場合に限る)を相続し、相続後一定期間内の当該居住用家屋の耐震リフォーム又は除却を行った場合、標準工事費(上限250万円)の10%を所得税額から控除するというものです。
3.創設の理由・必要性
 空き家対策を考える上で、空き家の発生を抑制することが重要な対策であること。、居住用家屋が空き家化する契機としては、相続時が最も多く、また、2010(平成22)年に行われた空家実態調査によれば、空き家化している建築物の多くは旧耐震基準による建築物であることが分かっています。そこで、相続を契機として空き家となる蓋然性の高い旧耐震基準の下で建築された居住用家屋の耐震リフォーム又は除却は、地域の適正な居住環境の整備の観点に大きく寄与するものであり、住宅政策の重要な政策課題であると要望では述べられています。
4.その他
 法に基づく市町村の取組を一層促進するため、民間事業者等と連携した総合的な空き家対策の支援や、専門家等と連携して実施する空き家対策のの先駆的モデル事業への支援を行うための、「空き家対策総合支援事業」「先駆的空き家対策モデル事業」の創設の予算請求も要望の中でもりこまれています。

 昨年の税制改正から動き出した空き家対策ですが、2016年(平成28)年から増税と要望という形での減税でスタートすることになります。
 増税対策として、①居住する、②リフォームして賃貸する、③売却する、という3つの選択肢があり、売却するのが一番の対策であると不動産会社のホームページ載っていました。増税と減税で自発的な空き家の対策を促す意図でしょうが、減税の要件は少し厳しいのではと思われます。範囲を広げるなどして、この政策を活用して自発的な空き家他対策を講じ安いような条件等の見直しを期待したいものです。
  
      参考資料   平成27年度税制改正(租税特別措置法)要鋼
             空家等対策の推進に関する特別措置法の概要
             平成28年度税制改正(租税特別措置法)要望事項
               ( 国土交通省、住宅局、住宅総合整備課 ) 

 
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企業版「ふるさと納税」制度

企業版「ふるさと納税」制度導入か?

  2016年度税制改正案に企業版「ふるさと納税」制度が検討されている。
ことの発端は、日本経済新聞によると2015年6月28日、秋田県出身の菅義偉官房長官が秋田市内で行われた講演会で述べたものだ。講演の中でふるさと納税の盛況さを実感していた菅義偉氏は、今度は企業版ふるさと納税制度を検討していることを明らかにし、財務省や総務省に検討を指示していることを明らかにした。
もともと菅義偉氏が総務省時代に発案し2008年に導入した経緯もあり、2016年度の税制改正大綱に盛り込み、実現を目指すというものだ。
個人向けのふるさと納税は、ふるさとへの恩返しや好意を抱く自治体への応援という理念に基づき、寄付先の自治体を定めている。ただしその実態は寄付の見返り品の良い自治体を中心に広がっているのが実状だ。

  2015年総務省発表の「平成2014年度寄付金税額控除調査」(集計期間は2013年1月1日~2013年12月31日)によると、全国でふるさと納税を行った人は133,928人で、寄付金総額は141億9800億円に上る。これに対する寄付金税額控除額は60億6200億円になる。もちろんこの寄付金控除金額以外に物品等の見返り物が寄付者に戻っている事である。その金額は統計資料の中には入っていない。
総務省の集計期間は1年遅れて発表されているので、ふるさと納税制度が注目された2014年1月から12月までの集計がまだ発表されていないので、具体的なことは言えないがかなり寄付金者は伸びているはずである。今後の発表に注目したい。
これに対し企業版ふるさと納税は、今でも自治体への寄付は全額損金に算入されているが、さらに内閣府の案では「効果が高い」と認定される地方公共団体の行う一定の地方創生事業を行う自治体に対し、企業が寄付をすれば法人住民税と法人税が軽減される仕組みを考えているとの事である。ただし、東京都や特別区など財政力が高い自治体などへの寄付は対象外とするなどを検討している。寄付金の全額を税額控除するのではなく、一定部分は企業負担となる。
  この制度が導入されると、各自治体は企業の民間資金を取り組むために独自の政策をつくり競い合う事になるだろう。個人版ではかなり各自治体間で創意工夫して競い合う効果があった。企業版においてもこのようになってほしいものである。
いずれにせよ例年通りで行けば、今年12月中旬には2016年税制改革大綱が発表される予定である。この制度が注目されるかどうかは3ヶ月後に具体的内容が判明される。
皆さんも年末の税制改革大綱に注目して見て下さい。

               参照資料 NP通信社 納税通信NO3388号
                 日本経済新聞2015 6/28 9/5朝刊
                 総務省HPより 

| 税制改正 | 09:25 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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国税徴収法とは何か

「国税徴収法」とは何か

税務当局の精鋭部隊が、日本年金機構の委任を受けて行う年金保険料滞納者への強制徴収制度が拡充される見通しとの報道があった。
具体的には、日本年金機構が国税当局に徴収代理を依頼できる要件が緩和され、2015年10月1日から施行されるというものだ。
徴収代理制度とは、徴収ノウハウや組織力を持つ国税庁に対し、日本年金機構が徴収権を委任するもので、年金滞納者の増加に歯止めを掛ける一策として2010年(平成22年)に開始されている制度である。
ところで国民年金の加入者数は1800万人で、4ヶ月以上保険料を滞納している人は約620万人いるという。約35%の未納者を減らすためには、やはり他の機関の協力が無ければ無理なのだろう。
前置きが長くなったが、今回はこの未納保険料や未納税金等の徴収の拠り所となっている法律である「国税徴収法」に関して取り上げたい。国税徴収法は、一般にあまりなじみの無いように感じられるが、徴収の現場では、税金の取り立ての際には必ず使われる法律である。
国税徴収法とは、国税の徴収に関する手続きを定めた法律であるが、単に国税の徴収についてだけ適用されるものでなく、広く地方税の徴収の他、社会保険料などの公課の徴収についても準用されるもので、租税(国税・地方税などの税金)と公課(各種社会保険の保険料・負担金・会費・罰金等)の徴収に関する強制力のある法律なのである。
具体的には他の私債権よりも優先されること。(国税徴収法8条)
更に、徴収職員は徴収現場において自力執行権が付与されており、その場で差押が出来る権限を持っている。これは一般の債権者が裁判所を通して債権の取り立てを行うのとは、明らかに時間もスピードも違う強力な権限である。なお、この徴収職員とは国税徴収法第2条11項でいうところの「税務署長その他国税の徴収に関する事務に従事する職員」を指すのであって、一般の税務職員は取扱う事はできない。従って身分証明書の提示をし、本人確認をすることが必要となろう。
なお、国税徴収法と労働債権との優先順位であるが、国税徴収法上には優先規定はない。あくまでも租税(国税等)が優先であるとの規定だけである。
これに対し、民法上、労働債権は先取特権として、他の債権者より優先して弁済を受ける規定はある。(民法308条)
しかし、会社が倒産した場合、労働者が未払い賃金等の労働債権を受けようとしても国税徴収法では租税債権が優先されてしまうので注意が必要だ。
さらに、徴収職員は滞納処分のため、必要があるときは滞納者の物又は住居その他の場所に行き捜索することもできる。(徴収法142条)そして、その場で差押もできるのである。
これだけ強制力のある法律に滞納者はどのように対応して行ったらよいのだろう。
まず、滞納処分のための調査・捜索を受ける前に事前に滞納者に対しては文書等で照会が来るはずである。それを放っておくことが問題であろう。まず文書をもって納税相談に行くことが問題を大きくしない方法だろう。
さらにこれは、債権(国等)と債務(滞納者)との滞納処分の問題なのである。この時点で租税に対して不服を言ってもほぼ無理である。租税が確定してしまっているからである。
そうではなく、税額が確定される前の、課税処分の段階で不服があれば申立てをし、自らの主張をすべきであろう。
この不服申立の権利を放棄し滞納処分が決定してから行動を起こしても遅いのである。

2015年9月3日、社会保障と税の共通番号(マイナンバー)の利用範囲を広げる改正マイナンバー法が衆院本会議で可決、成立した。今後は国税・地方税・社会保険税等の金額が個人番号に紐がついて把握されることになる。さらに2018年(平成30年)には金融機関の預金通帳番号までマイナンバーを広げようとしている。これにより滞納税額も一人ひとりわかることになり。滞納者の預金口座はすぐに差押の対象にもなりかねない。

以上見てきたとおり、国税徴収法はかなり強制力の強い法律である。従ってこの法律を現場で運用している徴収職員には過度な乱用は慎んでほしい。そして、この法律をもう少し世間に知ってもらう事も必要なのかもしれない。


                  参照資料  日本経済新聞2015年8月27日
                       NP通信社「納税通信」第3386号 

| 財政・税務 | 08:04 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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