税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業44年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

<< 2015-07- | ARCHIVE-SELECT | 2015-09- >>

| PAGE-SELECT |

>> EDIT

馬券払戻金の課税区分

               最高裁で「雑所得」の判決!
         しかし、要件厳しく、最高裁と異なる判決が下されました。

 本年3月10日に最高裁で馬券払戻金について、従来からの一時所得ではなく雑所得に該当し、外れ馬券の購入費の経費に認めらる判決が下されたことはご存知だと思います。この判決に伴い所得税法基本通達34-1の改正がおこなわれ、雑所得に該当する要件が盛り込まれました。
 そして、最高裁判決の2ヵ月後の5月14日に『馬券の払戻金は一時所得に該当し、外れ馬券の購入費は経費に認められない』という最高裁と異なる判決が東京地裁で下されました。
 この2件の判決の相違点は何か、そして問題点は何かを考えてみたいと思います。

1.最高裁判決の概要
 大阪市の元会社員男性A氏が、2007~2009年間に28億7.千万円で購入した馬券で得た払戻金30億円を申告せず、5億7千万円の雑税をしたとして所得税法違反の罪に問われました。
 A氏は、1億4千万円の儲けに対し税額が4倍に上ったため外れ馬券の購入費の28億7千万円も経費に含めて課税対象額を減らすべきだと主張し、検察側は外れ馬券の代金は経費に含まれないとしました。
 一審判決は、A氏のような大量購入は「娯楽の範囲を超え、営利目的の継続的な資産運用とみることができる」と判断して、脱税額を約5千万円に減額し、懲役2ヵ月執行猶予2年の判決を言い渡しました。二審は一審を支持、最高裁もこれを支持する形となりました。

2.東京地裁判決の概要
 北海道の公務員男性B氏は、2005~2010年に計72億7千万円の馬券を購入し計78億4千万円の払戻金について、雑所得にあたるとして、外れ馬券代の経費として申告しました。これに対して税務当局は国税庁通達に基づき、B氏の払戻金の収入は「一時所得」にあたり、当り馬券の購入費しか経費算入できないと判断し追徴課税をしました。  
B氏は、競馬の外れ馬券代を経費と認めなかった課税処分を不服として、国に所得税約1億9千4百万円の取り消しを求めた訴訟を提訴しました。
 東京地裁は、競馬愛好家の馬券購入方法と大差はなく、営利目的に当たらないと判断し、B氏の請求を棄却しました。B氏側は控訴する方針です。

3.最高裁判決と東京地裁判決の相違点
 A氏は馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用してインターネットを介して、馬券の的中率に着目しない網羅的な購入を行う行為が営利目的の継続的な行為であることから、雑所得に該当し外れ馬券も経費に当たるとされています。
 これに対してB氏はレースごとに自分で予想して購入額を決めており、機械的とはいえない」と指摘し、競馬のもうけは、「個別の馬券的中による偶発的な利益の集積にすぎず、一体の経済活動とまで認められない」として一時所得に当たると結論付けています。また、B氏の馬券の購入履歴などが保存されていないため、機械的、網羅的に購入していたとまで認められないことから、外れ馬券の購入費は経費として認められませんでした。

4.所得税法基本通達34-1(一時所得の例示)
 次に掲げるようなものに係る所得は、一時所得に該当する。
(2)競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除く。)
(注)1 馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して独自の条件設定と計算式に基づいてインターネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に個々の馬券の的中に着目しない網羅的な購入をして当たり馬券の払戻金を得ることにより多額の利益を恒常的に上げ、一連の馬券購入が一体の経済活動の実態を有することが客観的に明らかである場合の競馬の馬券の払戻金に係る所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当する。
2.上記(注)1以外の場合の競馬の馬券の払戻金に該当する所得は、一時所得に該当することに留意する。
  ㊟ アンダーラインを付した部分は改正部分
  ㊟ 赤字部分は、最高裁判決文で示されたA氏の馬券の購入方法

5.問題点
 「営利を目的とする継続的行為」の判断基準を大きく左右したのは、所得税法基本通達34-1の改正にあると思われます。
 最高裁の判決文によれば、『所得税法上、営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは、文理に照らし、行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当である。』と、所得を判断するための基準を示した上で、上記4.赤字で示したA氏の行為が雑所得に該当すると判断しています。
 これに対して、基本通達の改正は最高裁で示された所得を判断するための基準を引用するのではなくA氏個人の購入方法を引用しており、あたかもA氏と同じ購入方法でないと雑所得には該当しないような書き方となっています。

6.最高裁大谷剛彦裁判官の意見
 最高裁の判決文の最後に大谷剛彦裁判官の意見が記されています。要約すると以下のような内容となっています。
 ① 外れ馬券の購入代金を必要経費として控除できるとした原判決には法令違反
 ② 本件の外れ馬券の購入代金を所得税法37条1項前段の「直接に要した費用」として必要経費に当たるとしたのは法令解釈の誤り
 ③ 本件事案の特殊性に鑑み、また、巨額に累積した雑税額を被告人に負担させることの当否には検討の余地がある
 ④ 現判決が負担額の縮小を図ったとも理解できるところであるから、原判決を破棄しなければ著しく正義にまで反するといえないと考えられる
 ⑤ 本件を機に、本件に類する活動も考えられることから、課税の公平、安全性の観点から、課税対象を明確にして妥当な税率を課すなどの特例措置を設けることも必要であると指摘しておきたい
 つまり、最高裁においても本来は外れ馬券を必要経費に含めることは法令違反であると考えていること。しかし、被告であるA氏に巨額の税負担をさせることは酷であり、必要経費と認めることで税負担を縮小させることが著しく正義に反するといえないから、今回は一審、二審を支持したこと。そして、今後に備え、課税対象を明確にして妥当な税率を課すなどの特例措置を設けることを指摘したいこと。
 

 最高裁での判決文を最後まで読まなければ、最高裁の必要経費に対する考え方、判決の趣旨が理解できなかったと思います。ただし、今回はA氏に対して特殊性を鑑みて温情的な判決がなされたとしても、指摘された特例措置を設けなければ、A氏・B氏と同様の事例が今後も出てくるでしょう。そして、明確な基準がないまま東京地裁の判決のように馬券の購入方法だけで判断されるのでは、判決に対する不公平感しか残らないのではないでしょうか。

          参考資料  朝日新聞DIGITAL 2015年2月18日20時17分
                日本経済新聞 2015年5月15日2時3分
                最高裁判決本文:
                  平成26年(あ)第948号所得税法違反被告事件
                  平成27年3月10日 第三小法廷判決
                 所得税法基本通達 34-1




スポンサーサイト

| 所得税・所得控除及び税額控除 | 09:43 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

>> EDIT

消費税改正はビジネスチャンス

 消費税改正はビジネスチャンス

昨年10月3日のブログで「外国人向け消費税免税制度の改正」と題して2014年10月1日以降、訪日外国人向けに消費税の免税対象品目が拡大したこと。そしてそれに伴い輸出物品販売売場(免税店)が増加するだろうとの記事を掲載しました。
今回はその後10ヶ月が経過した現在の状況を調べてみました。
まず、ここで言う免税店とは正式名称では「輸出物品販売場」とよび、外国人旅行者のための消費税を免除する販売店「TAX FREE SHOP(消費税免税店)」といいます。
今この免税店が急増しています。以下の観光庁発表の図を見てください。

<免税店の年度別推移>            
年度         免税店舗件数  
2012年4月         4、173  
2013年4月         4,622
2014年4月         5,777
2014年10月        9,361
2015年4月        18,779                          観光庁HPより
消費税改正した、昨年10月から6ヶ月経過した2015年4月までの増加数は9,418件2倍の増加傾向です。そしてこの傾向は今後ますます増える傾向にあります。
その理由として、今後増加する店舗としてコンビニ店舗があげられます。新聞等の報道によると、セブンイレブンでは観光庁と連携した「インバンド拡大プロジェクト」の一環として、2015年7月中に全国のセブンイレブン17,886店舗中、約1000店で免税サービスを行う事にしています。更に、ローソン・ファミリーマートなどもこれに追随する動きを見せているのです。
次に訪日外国人1人当たりの旅行支出額ですが、2015年4~6月の3ヶ月の統計では177,428円、前年同期143,903円に比べ23.3%増加。そしてこの3ヶ月の旅行消費額は8,887億円、前年同期と比べ82.5%増となっています。これを1年に換算すると3兆5500億円の売上高に上ります。ちなみに訪日外国人数は3ヶ月合計で501万人、この内中国・台湾・韓国・香港の訪日客で全体の70%を占めています。


ところで皆さんはこれだけ免税店が増え売上高も増えてきたが、「消費税の納税はどうなっているのか?」 とお思いだと思います。
現在日本の消費税率は8%です。上記免税店が日本国内で商品を仕入れた場合には、8%の消費税をつけて支払います。そしてその商品を国内で販売した場合はその売上高に8%の消費税をつけて販売しています。これが消費税法上の原則です。しかし、訪日外国人(非居住者)への販売に関しては消費税法上免税することが決まっています。つまり消費税率が0%だと考えてもらうと分かり易いと思います。
この根拠条文は消費税法8条「輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税」1項に書かれています。
具体例としては、1000円で仕入れた商品の消費税額は80円。その商品を2000円で訪日外国人へ販売した場合消費税は0円(輸出免税)です。従って、預かり消費税0円-支払消費税80円=▲80円となり、申告することにより管轄の税務署より消費税還付を受けることが出来ます。国からの還付なので損をすることはありません。
この外国人旅行者に対する輸出免税制度を利用して、ビジネスを拡大しようと考えている方もおられます。
2014年の訪日外国人観光客は1,341万人ですが、世界ランキングではまだまだ22位です。第1位のフランスの8,370万人とは言いませんが、11位の香港(2,777万人)14位のタイ(2,478万人)20位の韓国(1,420万人)よりも少ないという事実もあります。
現在の訪日客のペースで行けば、2015年度は2,000万人を超えるでしょう。さらに2020年の東京オリンピックの年には3,000万を目標に掲げています。これらを考えるとまだまだビジネスチャンスがあるようです。
そして2019年4月からは消費税率が10%になります。輸出免税制度をうまく利用する事により消費税対策も考えられるかもしれません。
今後も消費税の改正があったらビジネスチャンスととらえ皆さんに的確な情報を早く提供していきたいと思います。



                  参照 観光庁ホームページ
                      国税庁ホームページ

| 消費税法 | 17:27 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

| PAGE-SELECT |