税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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法制審議会、民法改正原案まとまる

    制定以来初めての抜本改正、その影響は?(2)

 法務省の諮問機関である法制審議会の民法(債権関係)部会は、8月26日に開かれた第96回会議において「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」を決定しました。
 この中で特にポイントとなるものとして、前回は『消滅時効』と『法定利率』についてご紹介しました。今回は連帯債務について紹介します。

1.連帯保証( 要綱仮案 第18)
(1)保証債務の付従性( 要綱仮案 第18 1.)
民法448条では、保証人の負担が主たる債務より重いときは、主たる債務の限度に減縮すると規定していますが、2項として次の条文を追加しています。
 「主たる債務の目的又は態様が法消契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない。」
 この規定は保証人の保護のための規定で、保証人の負担の限度を主たる債務としていましたが、契約締結後に主たる債務が加重された場合に保証人の負担が重くならないよう配慮して法律で規定したものです。

(2)保証人保護の方策の拡充( 要綱仮案 第18 6.)
 保証人保護の観点から、個人が保証人になる場合の条件と債務者が保証人に対して情報提供を義務付ける規定が設けられました。
① 個人保証の制限
イ.個人が保証人になる場合には次の要件を満たさなければ効力を生じない。
 ㋑ 契約の日前1ヵ月以内に作成された公正証書で、保証債務を履行する意思表示
  をする。
 ㋺ 保証人は公証人に対して、その債務の内容について一定の事項及び主たる債務者
   が債務を履行しない場合には保証人が全額を履行する意思があることを口述し、
   公証人がその口述を筆記した内容が正確であることを承認して署名押印する。
ロ.ただし、保証人が次の場合には、個人保証の制限は適用しない。
 ㋑ 主たる債務者が法人の場合:理事、取締役、執行役、議決権の過半数を有する者
 ㋺ 主たる債務者が個人の場合:共同して事業を行う者、事業に従事している配偶者
② 契約締結時の情報提供義務
 事業資金の保証を依頼する場合には、ⓐ財産及び収支の状況、ⓑその他の債務及び履行状況、ⓒ担保の有無などを情報として保証人になろうとする者に情報提供しなければならない。
上記の説明をしなかった場合や事実と異なる説明により保証人がⓐ~ⓒの事項について誤認し保証契約を承諾した場合に、債権者が説明をせず又は事実と異なる説明をしたことを知ったときは、保証人は保証契約を取り消すことができる。
③ 保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務
 債権者は、保証人の請求により主たる債務に関する情報を遅滞なく提供しなければならない。
④ 主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
 期限の利益を喪失した場合には、債権者は2ヵ月以内に保証人に対してその事実を伝えなけらばならない。
 このように、個人が保証人になるためには強い意思表示を示すことを要件として安易に保証人にならないように規定しました。また、債務者及び債権者に対しては保証人への情報提供を義務付けました。
ただし、例外として法人の役員や事業経営者の家族が保証人になる場合には意思表示の要件を課していません。不動産担保が十分でない中小企業にとっての個人保証の必要性を考慮してのことと言われています。

(3)保証人の求償権( 要綱仮案 第18 3.)
① 委託を受けた保証人の求償権
民法459条では、主たる債務者から依頼を受けた保証人が、債務者に代わって債務の弁済をした場合には、求償権を有することを規定していますが、今回の改正では、括弧書きを追加し、求償権の限度額を定めています。
 「当該財産の額が主たる債務の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責の額」
この規定は、例えば1億円の債務を弁済するために保証人が時価1億1千万円の不動産を弁済に充てたとしても、求償権の額は免責を受けた1億円であることを明言したもので、債務者の保護の規定となっています。
② 期限到来前の保証債務の履行
民法459条については、保証人が履行期限前に弁済をした場合についての項目を追加しています。
 ㋑ 期限が到来した後に、債務が消滅した当時利益を受けた限度において償還すれば足りる
㋺ ㋑の償還額には、期限以後の法定利息及びその期限以後に履行したとしても避けることができなかった費用その他の損害賠償を包含する
(1)及び(2)の規定は保証人保護のためのものでしたが、(3)は債務者保護の規定となっています。保証債務の履行をした保証人からの求償権についての金銭面でのトラブルを防止するために限度額を定めています。

このように、今回の改正のうち保証債務に着目しても債務者と保証人の双方の立場から問題点の解消のための規定が設けられており生活に密着した内容となっています。次回も身近な改正点について紹介いたします。

           参考資料   民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案

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| 民法・商法・会社法 | 09:43 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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景気予測と消費税増税

4~6月期GDP下方修正、日本の景気はどうなる!? 消費増税は!? 

 内閣府は4~6月期の国内総生産(GDP)の改定値を発表した。前回から下方修正となり、景気がさらに落ち込んでいることがはっきりしてきた。日本の景気はこれからどうなるのだろうか。

 GDPの数字は四半期ごとに算出されるが、最初に1次速報が発表され、その後、新しい統計データが反映されて2次速報(改定値)の発表となる。4~6月期については、8月13日にまず1次速報が出され、約1カ月後の9月8日に今回の改定値発表となった。4~6月期のGDPベースでは、当初政府の予想は4~5%の減少を見込んでいたが、実際の現象は6.8%となってしまった。

 物価の影響を除いた実質GDP成長率は、前期比でマイナス1.8%(年率換算でマイナス7.1%)だった。前回の1次速報と比較すると0.1ポイント(年率で0.3ポイント)の下方修正となっており、マイナス1.8%という下落幅はリーマン・ショック時以来の大きさとなる。

 数字が下方修正されたのは、9月1日に6月期における設備投資(季節調整済み、ソフトウェア除く)は前期比1.8%減となっており、3四半期ぶりにマイナスを記録した。4月以降、企業の設備投資が伸び悩んでいる状況がうかがえる。

 GDPの改定値には、法人企業統計の数値が反映されるので、GDPにおける設備投資の項目がマイナス2.5%からマイナス5.1%と大幅にダウンしている。政府支出も振るわなかったことから、最終的にGDPが下方修正された。

 安倍政権では次の7~9月期におけるGDPの結果で消費税の10%増税を判断するとしている。今回のマイナス幅が大きかったことから、7~9月期についてはその反動でプラス成長になることが期待されている。また公共事業の発注も景気を下支えしそうな気配です。しかし、設備投資の低迷は当分続くことが予想されるから、プラス成長といっても劇的な回復にはならないでしょう。

頼みの綱は個人消費ですが、春闘による賃上げで名目上の賃金は増加しているものの、物価上昇によって実質賃金はマイナスが続いている。消費増税の反動による消費落ち込みが予想以上だったことから、こちらについてもあまり急回復は望めない。

 7~9月期の数字が悪かった場合には、急場の対策として、補正予算で公共事業を追加する方法などが考えられる。しかし、公共事業のやり過ぎで日本は人手不足になっており、思った程の効果はないかもしれない。

 消費税の増税決定は政治判断ですから、現時点では何ともいえないが、少なくとも日本の景気は当分の間、思わしくない状況が続くと思われる。
このように民間エコノミストの多くは、政府の読みが甘かったと見ているむきが多いようです。

  (参考:内閣府資料、The Capitl Tribune Japan より引用)

   ちなみに、主要企業の4月の反動減は以下のようになりました。
無題9

| 財政・税務 | 09:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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役員報酬と税務処理

 役員給与と税務処理 

中小企業の経営者の方で自分の役員給与が同業者あるいは世間相場と比べて適正なのかを一度は考えた方もいらっしゃることと思います。
毎年、TKC全国会では、TKC会員約1万人の関与先賃金データ、1月から12月分の統計を取りまとめ、情報提供会員事務所に1冊の書籍として提供しています。尚、市販はされていません。
今回はこの統計資料の2014年度版(平成25年1月~12月分)の中の社長の役員給与を見ていきたいと思います。なお、この役員のための調査収録法人数は105,864社、役員人員は202,866人にのぼります。
調査によるとまず全産業種平均社長給与月額915,000円。一番高い業種は医療福祉分野で1,463,000円。一番低い業種は宿泊業・飲食サービス業の748,000円になります。
売上規模別にみると年間売上高1億円以下給与月額500,000円、5億円以下給与月額800,000円、10億円以下給与月額1,000,000円などとなっています。
役員給与に興味のある方はご連絡ください。分かる範囲内でご回答いたします。
ところで、この役員給与ですが、法人税法上では原則、損金算入できない(給与経費で落とせない)事をご存知でしょうか。
役員給与の取扱いが全面的に改められたのは平成18年度の税制改正でした。
法人税法34条①で、法人所得の計算上、役員に支給した給与は損金不算入が原則とされたのです。
従って、この役員給与を損金算入出来る規定としては3つの手続きによるものとされています。
1. 定期同額給与定期同額給与とは、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ次のいずれかに該当する給与を言う。
① 事業年度を通じての同額給与
その事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与
② 株主総会で改定された同額給与
定期給与の額につき、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日までに、改定がされた場合のその事業年度の改定前の各支給期間における支給額が同額であり、かつ改定以後の各支給時期における支給額が同額である定期給与。
③ 業績悪化等に伴い改定した同額給与
定期給与の額につき、その内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由により、減額改定した場合のその事業年度のその改定前のその事業年度に属する各支給時期における支給額及びその改定以後の各支給時期における支給額がそれぞれ同額である定期給与。
④ 継続受給する経済的利益
継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの。
留意点としては、定時株主総会での改定以外は原則認めない。ただし例外として③の業績悪化等に伴う場合には減額を認める。ただし、「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」がある場合に限るとされている。

2. 事前確定届出給与
届出時期が重要である

定期同額給与のほか、例えば6月と12月に役員に支払う賞与を損金算入を認めるのが事前確定届出給与である。
この場合税務署長に次のいずれか早い日までに届出書を提出しなければならないとされている。
① 給与に係る職務の執行を開始する日。
② その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日。

3. 利益連動給与
その事業年度の利益に関する指標を基礎とした利益連動給与を代表取締役や執行役に支給する場合に損金の額に算入する規定をいう。
但しこの規定は同族会社には適用できず、有価証券報告書を提出する会社であることなどの要件を満たす必要がある。従って、大企業での適用であり中小企業の大部分では適用できない。

以上3つの規定にそぐわないものは損金不算入に該当することになるので注意が必要です。対処方法としては、毎期、法人の決算が終了したら、必ず株主総会議事録及び取締役会議事録を作成し、来期の役員給与を確定しましょう。備えあれば憂いなしです。
そして自分の会社で同業者・世間相場以上の給与を稼げるよう計画を立て遂行しましょう。次回では従業員の業種別・規模別の賃金相場を提供致します。

       参照資料:月額役員給与・役員退職金H26年版 TKC全国会発行
            法律会計制度&税務事例  多田雄司著 清文社

| 法人税の税務 | 12:13 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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法制審議会、民法改正原案まとまる

           制定以来初めての抜本改正、その影響は?
 
 法務省の諮問機関である法制審議会の民法(債権関係)部会は、8月26日に開かれた第96回会議において「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」を決定しました。
法制審議会の民法(債権関係)部会の会議は平成21年11月24日に第1回目の会議が行われ、大きく分けて3つのステージで改正の議論が進められました。第1ステージとして論点整理を行いその結果を「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」として取りまとめ、第2ステージとして中間試案に向けての審議が行われ「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」を取りまとめ、第3ステージで「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」がまとまりました。
 このように、96回の会議を重ね約5年をかけた民法の改正案がまとまり、来年の通常国会に民法改正案が提出されることとなったのです。
 「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」は、公序良俗から組合までの39の検討事項が挙げられています。このうちの特にポイントとなるものを紹介します。 

1.消滅時効( 要綱仮案 第7)
(1)債権等の消滅時効 10年から5年に
 民法167条の債権の消滅時効については、次のように改められることとなりました。
「債権は、次に掲げるいずれかに該当するときは、時効によって消滅する。
 ①債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき
 ②権利を行使することができる時から10年間行使しないとき 」
 
 債権の消滅時効については、『知ったときから5年間行使しないときに消滅する』という項目が追加され、一定の条件では期間が短縮されることとなりました。
(2)短期消滅時効の廃止、5年に統一
 民法169条~174条では、短期消滅時効の規定があり、飲食店のツケは1年、塾の授業料は2年、医療費は3年等と細かく規定があり、気付かないうちに消滅時効を迎えてしまったり、時効の期間がわかりにくいという不満の声がありました。
 このため、職業別の短期消滅時効に関する条文(民法169条~174条)は削除され、167条の債権等の消滅時効の条文が適用されることになり、5年に統一されることとなります。
(3)生命・身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効 追加
 「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の請求権について、次のような規律を設けるものとする。
 ①被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する
 ②権利を行使することができる時から20年間行使しないときは、時効によって消滅する


2.法定利率( 要綱仮案 第9)
 民法404条の規定により、法定利率については年五分とすると規定されていますが、次のように変動制の法定利率に改定されることこなりました。
(1)法定利率
 「法定利率は年3%ととする。」
(2)法定利率の見直し
 法定利率は、3年ごとに3年を一期として、1%刻み(1%未満の端数切り捨て)で変更されることとなりました。
 法定利率の5%については、以前から高すぎるとの指摘がありました。例えば、交通事故などの損害賠償金の算定については、被害者が生きていれば得られた利益から、生きていたと想定される期間に見積もられる運用益を除く事になりますが、控除される運用益を算定するのに使用されるのが法定利率です。従って法定利率が高ければ控除される運用益が大きくなり、遺族に支払われる損害賠償金が少なくなってしまうのです。
 また、法定利率は裁判で確定した損害賠償金の遅延に対する利息や、返済の遅延に対する遅延損害金を計算する際の利率に用いられたりするため、現在の金利水準との乖離が指摘されていました。
 法定利率の見直しは、被害者遺族への救済に繋がりますし、遅延利息等も現在の金利水準に近い利率が適用されることにもなるのです。
(3)商法514条の削除
商法514条(商事法定利率)である「商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする」の条文はこの改正に伴い削除されることとなります。

 このように、今回の改正のうち消滅時効と法定利率のみに着目してもこのように生活に密着した内容となっています。次回も身近な改正点について紹介いたします。

           参考資料  法務省ホームページ
                 民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案




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税務署調査担当者の発言は公的見解か

税務署調査担当者の発言は‘公的見解’か?

 指導項目発言の後の更正処分は信義則に反するか?

『T&A master 9月8号 NO.561】に乗っていた東京地裁の判決を紹介します。
まず内容は、「原告企業が‘事前確定届出給与に関する届出書(付表)’に記載した届出額と違う金額を役員らに支給したことに始まる」事案で、その後更正処分が行われた事案です。(以下、「本件」という)。
 法人税法上、事前確定届出給与が損金算入の対象となるためには、届出書(付表)に記載した‘届出額’どおりの金額を支給しなければならない。
  したがって、原告企業が役員らに支給した事前確定届出給与は、‘届出額’と‘支給額’が違うため、全額が損金不算入となることはわかる。
  ところが、税務署の担当職員は、法人税法上損金不算入となる本件役員給与について、‘今回は更正処分をせず指導項目にとどめる’旨の発言を行った。
 そして原告企業は、調査担当者からの要請を受けて、‘支給額’を‘届出額’と同額に修正した付表を提出した。
 その後、税務署の調査担当職員は、税務署内で改めて検討した結果、‘本件役員給与が損金不算入となることは法人税法上明らかであり、指導事項にとどめることはできない’旨の修正申告をしょうようした。
 しかし、原告企業は、修正申告をする意思がない旨を回答した。(税務署担当者の要請どおり、支給額の訂正の付表を提出していたからだと思う)。
 そのため、税務署は、‘本件役員給与を損金不算入’とする内容の更正処分を行った。
  この更正処分を不服とした原告企業は、‘税務署の調査担当職員が更正処分をせずに指導項目にとどめる発言をした後に行われた更正処分は「信義則」には反するなどと主張して、更正処分の取り消しを求める訴訟を裁判所に提起していたものである。
 その結果、裁判所は、‘まず信義則により課税処分を取り消すことができる場合があるとしても、
(1)納税者が税務官庁の公的見解の表示を信頼し、その信頼に基づいて行動したところ、後にその見解に反する課税処分が行われ、そのために納税者が経済的不利益を受けることになったものであるかどうか

(2)税務官庁の公的見解の表示を信頼した上で行動したことについて納税者の責めに帰すべき事由がないかどうか
という点を考慮することが不可欠であると指摘したのである。公的見解について裁判所は、様々な状況下で行われる税務署職員の見解の表示のすべてが公的見解の表示となるものではなく、税務署長その他の責任ある立場にある者の正式の見解の表示であることが必要になると判断した、ということである。

 裁判所は、本件の税務調査担当職員による指導事項にとどめる旨の発言及び付表の差替え要請について、‘税務官庁の一担当者としての見解ないし処理方針を示したに過ぎず、税務署長その他の責任ある立場にある者の正式の見解の表示であるとはいえないと指摘した。そのうえで裁判所は、本件について信義則の適用を肯定すべき事由があるとは認められない‘として本件役員給与を’損金不算入‘する内容の法人税更正処分は適法であると結論付けたのである。
 そもそも‘信義則’とは、民法上の原則です。民法第1条2項には、「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と書かれている。私人間では、相手の言動を信頼して行動し、その結果損害を被ったような場合には、信義則違反の問題が生じます。これは‘禁反言の法理’とも呼ばれ、一度いったことを覆すようなことは後からしてはいけない、という常識的な考えです。一般の感覚からすれば、対税務署の場合でも同じではないでしょうか。
 むしろ税務署職員の指導によるものであれば、より信頼するものではないでしょうか。ところが、現行の裁判実務では、課税処分に信義則を適用することには極めて消極的なのです。最高裁第三小法廷昭和62年10月30日判決があるからです。内容は省略しますが、この判決以降、課税処分が信義則違反とされたものは、見当たらないのです。
 それは、先程も言っているように、次の要件満たす必要があるとしたからです。

  ①税務官庁が納税者に対して公的見解を表示したこと
  ②納税者がその表示を信頼し、その信頼に基づき行動したこと
  ③その後にその表示に反する課税処分が行われたこと
  ④そのために納税者が経済的不利益を受けることになったこと
  ⑤納税者が税務官庁の表示を信頼し、その信頼に基づき行動したことについて責めに帰すべき事由がないこと

 この5要件があると、課税処分になぜ信義則が適用されにくくなるのか?
指導項目にすると納税者に伝え、納税者も要請に従って行動を起こしたわけだから、後になって更正処分を行うのはどうかと思うのですが。 
 この判決を見ると、一税務署職員の発言や要請に従う必要なし、ということになるのではないでしょうか。つまり、税務署長及びその他の責任ある立場にある者のお墨付きがあるまで、従う必要なし、ということになるのではないでしょうか。
 
  {参考・引用 T&Amaster 9/8号 NO.561、民法第1条2項、最高裁判決} 
    

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第2弾「特定支出控除の活用」

第2弾「特定支出控除の活用」

2013(平成25年)年2月28日のブログで、2013年度より改正になった「特定支出控除」制度の説明とその制度の活用を皆さんにお伝え致しました。ご存知でしょうか?もしその内容をご覧になっていらっしゃらない方は、2013年2月28日掲載のブログを見てください。
今回、2014年9月1日付の日本経済新聞朝刊3面で、国税庁が発表した2013年(平成25年)度確定申告による、この「特定支出控除」制度を利用した人が2012年度の6人から1600人に増えたとの報道がありました。
私のブログを見たわけではないでしょうが、毎年数名しか利用されていなかったこの制度がいっきに260倍に増えたことは、税に携わっているものとしてはなんともうれしい限りです。
この増加の要因を考えますと、まず2013年度分からこの制度の適用範囲を広げ、書籍や新聞、スーツの購入代、資格取得費、交際費も必要経費として認められるようになったからでしょう。もちろん業務上の必要経費に限られますが、従来から比べると、かなり使い勝手の良い制度になってきたのではないでしょうか

ここで再度この制度のおさらいをしておきましょう。

1特定支出控除の算出方法
給与等の収入金額 改正前(平成24年まで) 改正後(平成25年度以降)

給与1500万円以下
特定支出の合計額が給与所得控除額を超える場合、その超える部分の金額を給与収入から控除できる。 特定支出の合計額が給与所得控除額の1/2相当額を超える場合、その超える部分の金額を給与収入から控除できる。

給与1500万円超
 同     上 特定支出の合計額が125万円を超える場合、その超える部分の金額を収入金額から控除できる。

2適用範囲
改正前(平成24年まで) 改正後(平成25年度以降)
1 通勤費 通勤費
2 転居費 転居費
3 研修費 研修費

4 資格取得費 資格取得費 改正後の追加事項として、
弁護士・会計士・税理士・司法書士等の資格取得費も対象になる。
5 帰宅旅費 帰宅旅費


  無
勤務必要経費
(上限65万円まで) 図書費
衣服費
交際費等

3実際に事例で計算してみましょう。
 (前提条件) 1 給与収入 600万円
        2 給与所得控除174万(600万×20%+54万)
        3 特定支出金額 190万円
        4 扶養 無 基礎控除のみ38万円
        5 税額は平成26年3月31日現在の税率を採用

改正前(平成24年まで) 改正後(平成25年度以降)
特定支出控除
計算式
特定支出190万-給与所得控除174万=16万 特定支出控除
計算式
190万-(174万×1/2)=103万
103万円が認められる。
給与所得の計算
600万-(174万+16万)=410万-基礎控除38万=372万
所得税額3,720,000×20%-427,500
=316,500
復興特別所得税316,500×2.1%=6,600 給与所得の計算
600万-(174万+103万)=323万
323万-38万=285万
所得税2,850,000×10%-97,500
=187,500
復興特別所得税187,500×2.1%=3,900

今後もこの「特定支出控除」を利用する人は更に増えてくるでしょう。
そして、もっと税に関心を持って頂き、賢い節税をしてもらいたいものです。


    参考資料   国税庁:給与所得者の特定支出控除について
             松戸市HP:給与取得者の特定支出控除
             日本経済新聞2014年9月1日 朝刊3面

| 所得税・所得控除及び税額控除 | 16:09 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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