税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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インバンド業者の税務訴訟への一考察

平成29年2月3日最高裁の決定により東京高裁の判決が、平成28年2月9日判決が出たことに意見を申し述べます。
 
<事案の概要>
① 本件は、旅行業法に基づく旅行業等を目的とする日本法人である日本法人であるA INC (以下「A社」という。)の主催する訪日旅行についてA社との間に行っている取引(以下「本件取引」という。)が消費税法7条1項により消費税が免除される取引(以下「輸出免税取引」という。)に当たるとして、各課税期間分の消費税及び地方消費税につき、本件取引に基づいてA社から受領した対価の額を消費税の課税標準額に算入せずに確定申告をしたところ、所轄の芝税務署長から、本件取引が輸出免税に該当せず、本件取引の対価の一部が消費税の課税標準額に算入されるとして、各更正及び過少申告加算税賦決定を受けたことから、これらの各処分の取り消しを求めた事案である。
  

<当裁判所の判断>
① 当裁判所も、本件取引は輸出免税取引に該当せず、本件更正処分及び本件各賦課決定処分はいずれも適法であるから、控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。
その理由は、原判決の‘事実及び理由’の記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)‘本件旅行パッケージ商品’を‘パッケージ商品’に改める。

(2)‘確実に提供する’を‘これらの役務が各種サービス提供機関によって確実に提供されるように手配する’に、‘原告が本件訪日旅行客に対して国内における飲食、宿泊、運送等の役務を確保し、提供した対価’を‘控訴人がこれらの役割を果たした対価’に改め、‘行事終了後に’の次に‘、控訴人が企画し手配したとおりに’を加え、‘役務を提供した’を‘役務が提供された’に改め、‘「本件訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食、宿泊、運送等の役務を提供する」を「国内における飲食、宿泊、運送等の旅行素材の組合せを企画し各種サービス提供機関を手配することによりこれをA社が確実に利用できるようにする」’に改める。

  (3)‘本件訪日旅行客に対し’を‘飲食、宿泊、運送等の役務が各種サービス提供機関によって確実に提供されるよう手配する’に改める。
  (4)‘このことは’を削り、‘ことからも裏付けられる’を‘ことや、消費税法施行規則5条1項1号が、消費税法7条1項1号の輸出免税取引に該当することの証明のために整理、保存しておくべき書類を、関税法の規定による税関長の輸出の許可もしくは積込みの承認があったことを証する書類または当該資産の輸出の事実を税関長が証明した書類と規定していることなどは、上記の法解釈を前提とするものと解される’に改める。


 (5)‘同号ハの範囲を’から末尾までを‘同号ハ該当性の判断は上記立法趣旨等を踏まえて行うべきである。’に‘運送’を‘輸送’に改め、‘またはこれらに類するもの’を削り、‘国内において消費されるサービスであるということができるから’を‘A社が上記役務の提供により直接享受する便益は、控訴人が企画し手配した国内における飲食、宿泊、運送等の旅行素材の組合せを本件訪日ツアーの催行に際して利用することができることであり、この便益は上記旅行素材が所在する国内においてでなければ享受することができないものであるから、上記役務の提供は、消費税法施行令17条2項7号イ及びロに掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するものとして’に改める。

(6)‘本件取引は’の次に‘、国内に主たる事務所を有する事業者である控訴人が国内において行った役務の提供(消費税法[平成27年法律第9号による改正前のもの]4条3.項2号、消費税法施行令[平成23年政令第198号による改正前のもの]6条2項7号’として課税資産の譲渡等に該当し‘を加え、’消費税等‘を’消費税‘に、’各事実が‘を’各事実のうちに‘に改める。

② よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第7民事部
 裁判長裁判官 菊池洋一 裁判官 古田孝夫 裁判官 工藤正

                                  


<反論意見>
以上の判決について反論意見を述べます。

① まず、表記の表現のことばを改めている点。
そもそも包括的旅行パッケージ商品の販売であることを改訂しているだけでなく、都合の良いことばに改めている点。
売上の取引先が海外の旅行会社であって旅行者に販売しているわけではない。
そこで、便益を国内で受けるという施行規則にのっとってあてはめ、飲食、宿泊、運搬についてサービスの提供は国内であるからということで、課税資産の譲渡としてとらえる判断はいかがなものかと。
インバウンド旅行業そのものは、それぞれ形態も違うし取引の仕方も違う。すべてのインバウンド旅行業者にこの判決の判断をあてはめることには、違和感を持つ。

② 次にインバウンド旅行業者の海外旅行会社に対する消費税の輸出免税の該当性に
 ついて述べる。
   
A. 輸出免税取引であるかどうかを検証する前に、誰と誰の間の、どの取引を検証するのかを、明確にする必要がある。本判決の対象となる取引は、日本の旅行会社である弊社と、海外の旅行会社との間で行われたものである。この取引が輸出免税取引にあたるかどうかである。
旅行者は弊社の取引相手ではない。 まず取引相手であるということが前提で、その取引が輸出にあたるかということが条件。
   弊社と海外からの旅行者の間にはそもそも取引関係がない。
   弊社の顧客(取引先)は海外の旅行会社であり、彼らの顧客は海外在住の旅行者である。
    これは代金支払いの経路からして、疑う余地のない事実である。

B.施行令の解釈に論理の飛躍
    判決には、消費税法施行令第17条第2項第7号ロまたはハに、「非居住者に対
 する飲食または宿泊、バス、タクシー等による旅客の輸送」は輸出免税取引に該当しないとあるが、該当する、しないに関わらず、日本の旅行社と海外からの旅行客の間には、そもそも取引の事実がないのでこの解釈は意味を為さない。
   この規定は、日本のホテル等が非居住者と、直接にせよ間接にせよ取引を行った場合にその取引が輸出免税にあたらないとしたものである。

本意見書は、原処分庁提出の内容を踏まえ、判決の理由を補足しつつ改めて整理して述べると共に、あわせて反論を行うものである。
なお、本反論書で用いる用語は、別途定義しない限り、判決の理由(以下「判決決定理由」という。)と同様とする。

c. 本件取引は輸出免税取引に該当すること

 原処分庁は、本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれており、当該金額は、消費税法施行令17条2項7号ロ又はハに該当する役務の提供の対価であるから、輸出免税取引の対価の額に該当しないとする。
 しかしながら、以下詳論するとおり、本件取引で控訴人が海外旅行会社に対して提供する「役務」の内容は、包括的旅行プランの手配、企画、情報提供等であって、国内における飲食、宿泊、輸送等の役務とは言えない。消費税法施行令17条2項7号ロ又はハの役務には全く該当しない。本件取引対価の額は、その総額が、非居住者である海外旅行会社に対して行われる役務の提供の対価であるから、輸出免税取引の対価の額に該当するものである(消費税法施行令17条2項7号本文)。

(A) 本件取引において、当原告が海外旅行会社に対して提供する「役務」には、国内における飲食、宿泊、輸送等に係るサービスは含まれないこと

(1) 控訴人が提供する「役務」の内容

 判決理由でも認められているとおり、控訴人は、本件取引において、海外旅行会社が主催する日本国内旅行に参加する本件旅行者の日本国内での飲食、宿泊、輸送等に係る各種サービス提供機関を手配し、それらを組み合わせた日本国内旅行を企画し、パッケージ商品として海外旅行会社に販売している。
 そして、本件取引は、控訴人がパッケージ商品の手配を完了した時点で終了し、当原告は、国内での飲食、宿泊、輸送等の各種サービスが提供される場面において何ら関与するものではない。
 したがって、控訴人自身が各種サービス提供機関から国内での飲食、宿泊、輸送等に係る役務の提供を受け、それを海外旅行会社に対して提供しているわけではないことは明らかである。すなわち、本件取引で控訴人は、海外旅行会社に対し、情報の収集、旅行の手配、企画、情報提供等を行うと共に、当該旅行期間中に各種サービス提供機関が提供する国内での飲食、宿泊、輸送等の各種サービスを受けることができる地位を設定するという包括的な役務を提供しているだけなのであって、当該包括的な役務提供の対価である本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額は含まれているとはいえない。
 それにもかかわらず、原処分庁は、本件取引において当原告が海外旅行会社に対して提供する「役務」の内容自体を検討することなく、本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれているなどとしており、明らかな誤りである。これはあてはめであり、紆余曲折な取り上げを正当化している。

(2) 本件取引は個人旅行者との間の企画旅行契約ではないこと

 なお、本件取引は旅行業者と旅行業者との間の契約であって、旅行業者と個人旅行者との間の企画旅行契約とは性質を異にすることを、念のため付言しておく。
 すなわち、消費税法基本通達においては、旅行業者と旅行者との間の企画旅行契約に関して「旅行業者が主催する海外パック旅行に係る役務の提供は、当該旅行業者と旅行者との間の包括的な役務の提供契約に基づくものであり、国内における役務の提供及び国外において行う役務の提供に区分される」(消費税法基本通達7-2-7)とされているところ、国税庁は、旅行業者と旅行者との間の企画旅行契約は、飲食、輸送、宿泊等を含む包括的な請負契約であると取り扱っているようである(三宮修編『消費税法基本通達逐条解説』376頁)。
 しかしながら、上記の国税庁の解釈が正しいか否かは措いて、上記のとおり、本件取引は旅行業者と旅行業者との間の契約であって、旅行業者と個人旅行者との間の企画旅行契約とは性質を異にするものであるから、旅行業者と旅行者との間の企画旅行契約の内容をどのように解釈するとしても、本件取引において控訴人が海外旅行会社に対して、飲食、輸送、宿泊等の役務を提供していないことに変わりはないのである。飲食、輸送、宿泊等の役務を提供しているのは、海外の旅行会社なのである。

(B)小  括

 以上のとおり、本件取引において、控訴人は、海外旅行会社に対し、情報の収集、旅行の手配、企画、情報提供等の包括的な役務を提供しているのであって、国内での飲食、宿泊、輸送等に係る役務を提供しているわけではない。そして、これは、消費税法施行令17条2項7号イ乃至ハの役務には該当しない非居住者に対して行われる役務の提供であるから、本件取引は輸出免税取引に該当し(同号本文)、本件取引対価の額は、その総額が輸出免税取引の対価の額に該当する。

(1)原処分庁の主張は何れも不合理であること

 原処分庁は、①本件取引対価の額が、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価の額を含む本件国内パッケージツアーに要する費用の額を積み上げた金額に控訴人の利益の額を上乗せした金額により決定されていると認められること、及び、②本件国内パッケージツアーにおける本件旅行者の国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価が申立人によって各種サービス提供機関に支払われていることの2点を指摘して、本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれているとする。
 しかしながら、以下詳論するとおり、そもそも上記①の事実は認められず、また、上記②の事情も、本件取引対価の額の中に、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれているという原処分庁の主張を根拠づけるものではない。

(2)上記①の事実は認められないこと

 本件は、売上金額から仕入金額を差し引いた金額が粗利になるという当たり前の計算をしているだけであり、そうであるからと言って、売上金額、すなわち本件取引対価の額の決定方法が、仕入金額に控訴人の利益の額を上乗せすることによって決定されていることにならないことは明らかであるし、ましてや、本件取引対価の額が本件国内パッケージツアーに要する費用の額を積み上げた金額に控訴人の受取手数料を加算して決定されていることにも全くならない。
 確かに、控訴人は、移動にかかる費用、宿泊の費用、観光施設の入場料等を積算して「包括的に」利益が上がるようにしているが、これは結果として包括的に利益が上がるように日本国内旅行を企画・手配しているということに過ぎない。本件取引対価の額は、本件国内パッケージツアーに要する費用の額を積み上げた金額に当原告の受取手数料を加算して決定されているわけではないし、ましてや、本件国内パッケージツアーに要するそれぞれの飲食、宿泊、輸送等の役務の対価に個別に対応しているわけでもない。

(3)上記(2)の事情が原処分庁の主張を根拠づけるものではないこと

 取引相手に「役務」を提供するために必要な費用を支払ったからといって、その費用に係る役務等が、取引相手に提供する「役務」の内容に含まれるわけではない。
 このことは、例えば、弁護士が相手方と交渉するに当たって電話代を支払ったからといって、弁護士が依頼者に提供する「役務」は代理人として交渉することであって、提供する「役務」に電話で話ができるようにすることが含まれるわけではないことを考えれば明らかであろう。
 したがって、本件国内パッケージツアーにおける本件旅行者の国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価が申立人によって各種サービス提供機関に支払われているからといって、本件取引において控訴人が海外旅行会社に対して提供する役務の内容に国内における飲食、宿泊、輸送等のサービスが含まれることを全く基礎づけるものではなく、また、本件取引対価の額の中に、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価に相当する金額が含まれることにも全くならないのである。

(4)直接に役務の提供を行う必要がないとの主張について

 また、原処分庁は、控訴人が直接に国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供を行うものではないとしても、非居住者である本件旅行者が国内において直接便益を享受する役務については、消費税法施行令17条2項7号ロ又はハに当たり輸出免税取引に該当しないとする。
しかしながら、上記原処分庁の主張は、審査請求人の提供する役務に間接的にでも国内における飲食、宿泊、輸送等の役務が含まれることを前提として、その場合に、国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供を審査請求人自身が直接行わないとしても、当該役務は消費税法施行令17条2項7号ロ又はハの役務に該当すると言っているだけである。
 そして、消費税法上、明確に、消費税は事業者が国内において行う役務の提供に対して課される旨規定されている(消費税法4条)のであって、事業者が直接にも間接にも行っていない役務の提供に対して消費税が課されることが許されないことは明らかである。
 したがって、本件取引においては、上記のとおり、当原告が提供する役務に国内における飲食、宿泊、輸送等の役務が含まれない以上、上記原処分庁の主張は、何ら本件取引が輸出免税取引に該当することを否定する理由とはならないのである。

(5)小  括
① 以上のとおり、原処分庁の主張は何れも不合理であって、本件取引対価の額の中に、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれていることを根拠づけ、本件取引が輸出免税取引に該当することを否定するものでは全くない。

② 原処分庁が主張する輸出免税の趣旨からも、本件取引は輸出免税取引とされるべきであること

 前記のとおり、当原告が提供する「役務」の内容には、国内における飲食、宿泊、輸送等の役務が含まれず、消費税法を文言通り適用すれば、本件取引は輸出免税取引と認められるが、更に、原処分庁が主張する輸出免税の趣旨からも、本件取引は輸出免税取引とされるべきである。
 すなわち、原処分庁は、消費税法施行令17条2項7号の規定は、当該役務の提供を受けることが国内において完結するような性質の役務の提供については、国境をまたがない、正に国内において消費されるサービスであり、輸出と捉え得るものではないので、非居住者が国内において直接便益を享受する役務の提供として輸出免税取引から除外するものであると主張していると思われるが、本件取引は、非居住者である海外旅行会社に対して役務が提供されているだけでなく、更に、役務の提供を受けた海外旅行会社が、国外において、本件海外旅行者に対して役務を提供することが想定されているものであるから、正に、国境をまたぐ国内において完結する性質のものでないことは明らかである。
したがって、本件取引は、国境をまたぐ国内において完結する性質のものではないのであるから、上記原処分庁の主張する消費税法が輸出免税を認める趣旨からしても、輸出免税取引と認められるべきである。


(6)総  括

 以上のとおり、本件各課税期間の消費税及び地方消費税については、本件取引対価の額の総額が輸出免税取引の対価の額に該当することを前提として更正されなければならず、本件更正処分及び賦課決定処分は直ちに取り消されるべきであると考える。

以 上
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異例の課税取り消し・不服審裁決

説明不足で課税取り消し! 国税不服審判所裁決!  

朝日新聞に異例の課税取り消しの記事が載っていたので、紹介したいと思う。
「東京国税局が神奈川県の会社社長らに相続財産約8億円の申告漏れを指摘したことをめぐり、東京国税不服審判所が昨年11月、‘課税理由を説明しておらず、違法だ’として、約2億5千万円の追徴課税を取り消していたことが分かった。説明不足が原因で、課税が取り消されるのは極めて異例だ。」というもの。 

2013年1月1日の施行の改正国税通則法(2011.12.2改正)は、税務調査の明確化を目指し、所得隠しや申告漏れなど納税者に不利益な処分をする場合は、すべての納税者に課税理由を書面で説明するように義務付けている。
国税不服審判所(以下、「審判所」という。)の裁決は昨年11月18日付きで行われた。社長ら遺族3人は、2011年に亡くなった父親の土地や株式など約8億円の財産を相続した。一方で、父親は合資会社の債務を負う‘無限責任社員’で、その会社には約14億円の債務があったとして、相続税はかからないと税務署に申告した。
これに対し、国税局は父親が無限責任社員になったのは相続税の回避が目的で、約14億円の債務を請求される見込みもないと判断した。13年に約8億円の申告漏れを指摘し、約2億5千万円を追徴課税した。遺族は‘債務は存在した。課税の理由も説明されていない’として、国税不服審判所に課税の取り消しを求めた。
審判で、国税局は‘課税の理由は、金額と適用法令が提示されれば十分’と主張したが、審判所は、‘課税の理由が不明で、法律の要件を満たしていない違法な処分だ’として課税を取り消した。実際に債務があったかどうかについては判断しなかった。
審判所で課税が取り消された場合、通常は裁決の内容を覆す‘新たな情報’などがなければ、国税局側は改めて課税することはできない。しかし、国税局は今回のケースについて、‘課税の理由を明示しなかった形式的な誤りだ’として、裁決で説明不足と指摘された点を改め、課税し直すかどうかを検討しているとみられる。
これに対して、国税庁OBの酒井克彦中央大学商学部教授(租税法)の話では、‘課税理由の説明は、国税局側と納税者側の争点を明らかにする機能があり、国税局は理由を示さなければ課税してはいけない。今回の場合、課税の理由は何通りも考えられ、審判所の裁決は正しい判断だったと思う。2013年施行の法改正を受け、各国税局は課税理由を納税者に的確に示す研修をしているが、さらに徹底するべきだ。’と述べている。
改正通則法が施行後の今回の課税取り消しは確かに説明不足が理由で行われたのは異例だと思いますが、国税局側の一方的な判断で追徴課税が行われることは避けなければならないし、課税の根拠も‘金額と適用法令が提示されれば十分’とするのは納税者の権限を脅かすものであることは間違いないと思いますが。
最後に通則法の改正条文を載せておきます。

*通則法74条の11
(調査の終了の際の手続)《追加》平23法1142 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。


(参考:2015.4.19朝日新聞記事、改正国税通則法)

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裁決事例紹介

 今回は、T&Aマスターの2014.6.2号に掲載された未公開の裁決事例を紹介させていただきます。不動産売買を目的とする法人を介して滞納者の不動産を取得し、滞納者の預金が競落資金として使われたことが徴収法39条に基づいて第二次納税義務があるとして納付告知処分をしたが、それが取り消された事例です。

競落資金の移動により請求人預金の外形を作出!!
審判所、金銭の無償譲受けを認めず!

(1)基礎事実
 ①本件滞納者は、飲食店を目的として設立された法人。
 ②代表取締役は、設立時から現在まで請求人の長女Aの夫Bが務めている。
 ③H4.5.1から現在まで、Aが取締役を務めている。
 ④X社は、不動産の売買を目的として設立された法人。
 ⑤X社は、設立時からH23.11.15までの間は請求人が、同日から現在に至るまでAが代表取締役として登記されている。

 Bが所有していた土地及び同所所在の建物(以下、「本件不動産」という)は、B及びAの自宅であり、Bを債務者とする根抵当権が設定されていたところ、○○○に○○○において担保不動産競売開始決定がされた(以下、「本件競売事件」という)。
 X社は、○○○に、入札価額を×××円、入札保証金の額を×××円と記入した入札書を競売執行官へ提出した。X社は本件不動産を競落し、○○○に、担保不動産競売による売却を原因としてX社に所有権移転登記が経由された。
 本件滞納者に帰属するB名義の○○○の普通預金口座(以下、「本件滞納者口座」という)から○○○に×××円、同年8月20日に×××円が出金された(以下、これらの出金された金銭を本件金員1・2という)。
 請求人の普通預金口座(以下「本件請求人口座」という)に、本件金員1,同年8月23日に本件金員2が入金され、同口座から同月25日に×××円が出金された。
 なお、本件金員1・2が本件請求人口座に入金されてから、当該×××円が同口座から出金されるまでの間に本件請求人口座の出金はなかった。
 X社のS銀行普通預金口座へ、平成22年8月25日に、×××円が入金され、これにより同口座の預金残高が28,520,000円となっていたところ、S銀行、同口座から×××円が出金された。X社は、○○○に、○○○の預金口座へ、本件競売事件に係る競落残代金として、×××円を振り込んだ。
 本件金員1・2の請求人口座への振り込みが、本件滞納者による請求人への貸付けまたは債務の弁済としてされた事実はない。

(2)争点及び主張
 本事案の争点は、請求人は、本件滞納者から金銭を無償で譲り受けたか否か。

(3)審判所の判断
 ①認定事実
 請求人は、X社の設立時からH23.11.15までの間、唯一の取締役、また、唯一の代表取締役として登記されていたものの、X社は、請求人に役員報酬を一切支給していなかった。
 Bは、○○○に、本件滞納者口座から×××円を出金し、X社名義で、本件競売事件に係る入札保証金として×××口座に振り込んだ。
 Aは、H22.7.12に、Aの唯一の資金管理口座であった○○○口座を開設し、以降管理している。
 X社は、少なくとも設立時から競落までの間、本件不動産の競落に関する事業以外の事業を行っていなかった。

②判断
 1.請求人は本件滞納者から本件金員1・2を無償で譲り受けたか否かについて
 本件金員1・2が本件請求人口座に入金され、これらの金銭の本件請求人口座への振り込みが有償行為である本件滞納者による請求人への貸付けまたは債務の弁済によるものでなかったことは、請求人が本件滞納者から本件金員1・2を無償で譲り受けた事実を一応うかがわせるものではある。
 しかしながら、以下のことから、請求人が本件滞納者から本件金員1・2をそもそも譲り受けていたと認めることはできない。 (イ)B及びAがX社を実施的に支配していたこと。
 BおよびAのX社の代表取締役に関する答述は、X社の登記上代表取締役が請求人からAに変更されていること、X社は請求書に役員報酬を一切支給していなかったことと整合して信用できるから、B及びAは、本件滞納者の代表取締役等である自身らがX社の代表取締役に就任することは不適切あるいは不可能であると認識し、請求人が、X社の設立当初の代表取締役として登記されるに至ったと認められる。
 また、Aの本件不動産を競落するための手続きを誰が行ったかに関する答述は、Bが本件競売事件に係る入札保証金を○○○口座に振り込んでいること、Aが本件競売事件に係る競落残代金の支払に充てられた資金が出金された○○○口座を管理していたことと整合し信用できるから、請求人は、本件不動産を競落するための手続に関与しておらず、B及びAがこの手続を進めていたと認められる。
 以上に加えて、BおよびAのX社を、本件不動産を競落するために設立した旨の答述と、X社が本件不動産の競落に関する事業以外の事業を行っていなかった事実を併せ考慮すると、請求人はX社の実質の代表取締役ではなく、当該事業に関する手続を進めていたBおよびAがX社を実質的に支配していたものと認められる。
(ロ)本件金員1・2につき請求人による費消等が予定されず競落資金とすることが予定されていたこと。
 B及びAの本件金員1・2の使途に関する答述は、金銭の移動の事実と整合し、両者の答述間に矛盾もなく信用できるから、B及びAは、本件金員1・2が本件滞納者口座から出金された時点で、請求人がこれらの金銭を費消し、あるいは、貯蓄し続けることを想定しておらず、一方でこれらの金銭を本件不動産の競落のために使用することを意図していたと認められる。

(ハ)請求人による費消等がされずX社による競落が実現したこと。
 B及びAの想定及び意図のとおり、本件請求人口座に本件金員1・2が入金された後、同口座から×××円が出金されるまで本件請求人口座の預金が費消されず、出金された×××円が○○○口座に入金された後、X社による本件不動産の競落資金として利用され、X社が本件不動産を取得した。

(ニ)小活
 以上のことからすると、本件金員1・2の本件請求人口座への入金は、X社の競落資金の原資が請求人の預金であるとの外形を作出することを目的として行われたものであり、本件金員1・2は、本件滞納者の預金がX社の競落資金として利用されるまでの資金移動の過程において、単に本件請求人口座を通過させられたにすぎないというべきである

(ハ)結論
 以上のとおり、請求人は本件滞納者から本件金員1・2を譲り受けておらず、請求人が本件滞納者から金銭を無償で譲り受けたとは認められないから、徴収法39条の規定に該当するとしてされた本件納付告知処分は、その全部を取り消すべきである。


(引用・参考 T&Aマスター NO.548 2014.6.2)

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企業再編税制”活用”に黄信号

企業再編税制〝活用〟に黄信号(2014.3.18東京地裁)
営利を目的とする法人が税負担の軽減を図るのはごく自然なことだが、やり過ぎは禁物」(国税関係者)

企業再編税制を利用した大型節税に対する行為計算の否認の是非をめぐる裁判で、初の司法判断が下された(平成23年(行ウ)228号)。インターネット検索大手の「ヤフー」が、企業買収によって引き継いだ大型赤字の損金処理を国税当局から否認されたことを受け、追徴課税取り消しを求めて争っていた裁判で、東京地裁はヤフーの請求を棄却。近年、中小企業の間でも注目されている企業再編税制、そして国税当局の伝家の宝刀「行為計算の否認」と、気になるテーマ満載の事件に各方面から強い関心が寄せられている

  ヤフーは、平成21年2月に通信大手「ソフトバンク」の100%子会社であった「ソフトバンクIDCソリューションズ」(IDCS)を買収し、その翌月に同社を吸収合併。IDCSが抱えていた540億円の繰越欠損金を引き継いで自社の損金に計上して申告したところ、国税当局から「企業再編税制を利用した節税目的の行為」として否認され、更正処分を受けた。ヤフー側は「事業を行う上で必要だった」とし、過少申告加算税を含む約180億円の追徴課税の取り消しを求めて争っていたもの。
 法に則って節税していた納税者が、税務署から「租税回避行為」といって課税され、裁判所も税務署に味方――。飛び交う数字の大きさから「大企業の問題」と捉えてしまいがちだが、近年、企業再編税制は事業承継問題や戦略的経営マネジメントを考える中小企業にとっても注目のキーワードであり、また「行為計算の否認規定」の照準は節税を追求するすべての会社に向けられていることから、決して他人事ではない。
  企業再編税制は、企業の合併・分割を促すために平成13年に導入された制度。組織再編時に発生する資産の譲渡損益を繰り延べることができるほか、被合併法人の赤字を引き継ぐこともできる。ただし大きな節税効果が期待できる赤字の引き継ぎについては制限が設けられており、特定資本関係が発生してから5年以内の合併については「みなし共同事業要件」を満たしていることが条件とされている。
  みなし共同事業要件とは、①事業関連要件、②規模要件、③規模継続要件、④経営参画要件、の4要件のこと。①②③、または①④を満たしていればよい。ヤフーにとっては④の経営参画要件(合併法人と被合併法人の特定役員が合併後も役員として継続する見込みがあること)がカギとなったが、代表取締役がIDCSの取締役副社長に就任することによりこれを満たしていた。
  ところが国税当局は、本件買収や合併をはじめ代表取締役のIDCS取締役副社長への就任など一連の行為は、赤字の引き継ぎ要件を形式的に満たすことを目的とした「異常」で「変則的」な行為であると判断。組織再編に係る行為計算の否認規定(法人税法132条の2)を適用して、巨額の追徴課税に踏み切った。
  組織再編に係る行為計算の否認規定は企業再編税制とセットで創設された。合併等により法人税の負担が不当に減少したと認められる場合には、その行為または計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより法人税額の計算等をすることができるというもの。つまり他の税務上の規定はすべて満たしていたとしても、「租税回避目的の合併」である場合はしっかり課税しますよ、という規定だ。具体的な判断基準が示されていないため納税者にとっては不気味な存在。「同族会社の行為計算の否認規定」(法人税法132条)が〝伝家の宝刀〞と言われ、めったに抜かれることがなかっただけに、今回の事件は大きな注目を浴びた。
 裁判では、ヤフー代表取締役のIDCS取締役副社長への就任が、行為計算の否認規定の「法人税の負担を不当に減少させる結果になると認められるもの」に該当するかなどが争点となった。ヤフー側はあくまで「事業上の目的であった」と主張したが、東京地裁の谷口豊裁判長は3月18日、「法132条の2に基づく更正処分は適法」としてこれを棄却。ヤフーの広報担当は「主張が認められず残念。判決を精査したい」とし、控訴については「未定」(3月27日現在)としている。
  なお東京地裁は同日、IDCSから営業部門を切り離して設立された「IDCフロンティア」が、「のれん代」をめぐる課税処分の取り消しを求めていた関連訴訟についても棄却した。こちらは「のれん代」を損金に計上するために非適格分割の体裁を整えていたに過ぎないとして、やはり組織再編に係る行為計算の否認規定が適用されたもの。
 「営利を目的とする法人が税負担の軽減を図るのはごく自然なことだが、やり過ぎは禁物」(国税関係者)。今後の企業再編実務にあたっては、行為計算の否認規定の存在を十分意識しておく必要がありそうだ。

納税通信3316号(2014年4月7日)

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「更正の申出に対してその更正をする理由がない旨のお知らせ」は国税に関する法律に基づく処分に該当しないとした事例

「更正の申出に対してその更正をする理由がない旨のお知らせ」は国税に関する法律に基づく処分に該当しないとした事例

2013年9月26日に、国税不服審判所より公表裁決事例集NO90(2013年1月~3月分)が発表されました。(国税不服審判所HP参照)
この裁決事例集の中で、今回、気になる裁決事例が掲載されていたのでここに紹介し意見を述べさせていただきたい。
(事案)
「更正の申出に対してその更正をする理由がない旨のお知らせ」は国税に関する法律に基づく処分に該当しないとした裁決事例  2013年1月17日裁決
 
《裁決要旨》
請求人は、更正の申出に対してその更正をする理由がない旨のお知らせ(以
下「更正の申出に対するお知らせ」という。)の取消しを求めて審査請求をしている。しかしながら、更正の申出の手続は、更正の請求とは異なり、法令上の根拠に基づくものではないから、更正の申出に対するお知らせは、直接納税者の権利義務を形成し又はその範囲を確定するものではなく、単に、納税者からの減額更正を求める申出を契機として、税務署長が当該納税者の納税申告書に記載された課税標準等又は税額等を更正する理由がない旨を知らせるものに過ぎない。
 したがって、更正の申出に対するお知らせは、国税通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する「国税に関する法律に基づく処分」に該当せず、その取消しを求める本件審査請求は不適法である。
 以上の通り、国税不服審判所が門前払いをした事例である。
私はこの裁決事例内容に近い案件を現在東京国税不服審判所へ審査請求している。そのなかの一文を紹介したい。

(不服申立て内容)
今回課税庁側(芝税務署)は、本件申立人が申立てている、第9期(自平成20年6月1日至平成21年5月31日)、第10期(自平成21年6月1日至平成22年5月31日)更正の申出に関して実質審理されているにもかかわらず、それ自身が法律上の効果を発生させる行為ではなく、法律効果を伴わない行政庁による執行上の行為なので、国税に関する法律に基づく処分には該当しないものとして却下処分とした。

「更正すべき理由がない旨の通知処分」の法的性質については、税務大学校研究部主任 池本征男教授によれば更正処分類似のものと解する「更正類似処分説」と請求拒否に当たるものと解する見解「請求拒否説」があるとしている。
更正類似処分説によれば、この「更正をすべき理由がない旨の通知処分」に対して不服
申立てがされた場合の審理の範囲としては、納税申告書に記載されている課税標準等
又は税額等が過大であるかどうかを全面的に見直し、結果として減額更正をする必要が
有るか無いかを判断し処分するものであるとしている。
本職はまず、この更正処分類似説を主張するものである。
この更正処分類似説が現在の学説の主流であることも付け加えたい。更に内容の実質
審議を行っているので、更正処分類似説が妥当である。

 次に、立正大学法学部 山下学教授から頂いた「意見書」では、以下のように述べている。
更正の嘆願は,国税通則法を含め広義の税法で定められた手続ではありません。
しかしながら,以前小職が目にした東京国税局の「所得税事務提要」では,更正の請求書の「請求書」の部分に「取消線」を引いて「嘆願書」と書き換えて受理するよう,実務的に認められ,定着した方式であると考えます。
 また,更正の嘆願の法的性質は,職権更正の除斥期間内であれば,職権更正をすべき,行政行為の「促し」であると同時に,国税通則法第24条(更正)では,「税務署長は,納税申告書の提出があつた場合において,その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかつたとき,その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは,その調査により,当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する。」とされております。これは,「更正をすることができる。」という行政裁量たる裁量行為を認めたものではなく,「更正する。」覊束(きそく)行為とされております。
 従って,更正の嘆願書により「納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかつたとき」に該当することが探知できたときには,「その調査により,当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する」必要があるものと思料します。

以上のように山下学教授は述べられている。私もこれらの意見に賛成である。
更正の請求も更生の申出も、税務署長の減額更正という職権発動を促すものには変わりはない。従って、更正に関する申出に対するお知らせは、更正の請求に対する通知処分と同様の法律上の効果を有するものであり、当該お知らせによって税額等を確定させる法律上の効果を有するものと解される。従って、本件お知らせは上記2事業期間の税額等を確定させる法律上の効果を有するものであって、国税に関する法律に基づく処分に該当するから不服申立ての対象となる。   
と主張したい。
                              以  上


参照資料
「更正をすべき理由がない旨の通知処分」に対する不服申立ての審理等について」
税務大学校研究部主任 池本征男教授 

「意見書」              立正大学法学部    山下学教授
                               

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