税理士 向山裕純の税のなんだパンダ

創業45年を迎えました。難しいと思われがちな税金についてわかりやすい解説をしていきます。税金以外にも時事問題など取り上げていきます。

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消費税の免税と非課税について

 消費税について2017年8月28日の納税通信の一筆啓上に佐藤善恵税理士の‘消費税には免税や非課税が本当に必要なのか?’という記事が載っていた。
 この2017年2月3日にインバウンド旅行業の消費税の課税標準について最高裁の決定により東京高裁の判決が出た。結論は‘飲食・宿泊・運送等については、国内において消費されるサービス’ということで消費税の課税標準額に算入されるとして認められないものとなった。
 ‘消費税は、一定の取引については非課税とされている。佐藤善恵税理士は次の例をあげて述べているが、住宅の貸付は、賃借人の保護という政策的な配慮から非課税であると説明されている。
 また、輸出免税については、国外で消費されるものに日本の消費税がかかった価格で輸出されると、輸出物品の国際市場における競争力の低下を招くことになるから消費税を免除しているなどと説明されている。この説明はどうかと思う。
 ここではサラリーマンの貸家の例をあげている。内容は次のようなものである。
 ‘A氏が空き家を貸そうかと考える。その用途は制限していない。消費税を含めて、とにかく年間270万円の賃料収入を確保できればいいと思って借主を募集する。すると、事務所として使いたいというBさんと、住むために借りたいというCさんが同時にあらわれた。BもCも少々高くてもこの物件をどうしても借りたいと考えている状況ならば、A氏はどうするか。賃料を滞納せず払ってくれるか、近所に迷惑をかけるような人ではないだろうか’ということがA氏の一番の関心事である‘と。BもCもその点に差がなければ、どちらが借りてくれてもいいのである。
 このような状況下では、「年間賃料の本体価格は250万円で消費税が20万円」などとは考えない。また‘この場合単に需要と供給の問題で賃料は決まる’とも。
 A氏がB氏に貸すときは消費税抜きの賃料を270万円にして契約するだけである。仮にA氏が消費税の課税事業者であれば、自らの消費税の税効果を考慮して事務所用に貸すのか、居住用に貸すのかで賃料に差を設けるかもしれないが、居住用であることを理由に消費税を除くことはしないだろう。
 消費税が課税されたとしても、貸主の価格設定は影響を受けず、住宅の貸付を非課税としても借主の負担は変わらない。
では輸出免税はどうでしょうか。輸出企業は、海外の消費者に日本の消費税を課すことができない一方で、国内の生産活動に伴い仕入先等に支払った消費税を輸出価格に転嫁できない。したがって、輸出業者は国内で支払った消費税の還付を受けて当たりまえだという理屈による輸出免税である。
 輸出大企業は、消費税還付で優遇されているといった声も聞くが、制度として存在する以上‘優遇’というのにはあたらないが、輸出免税制度の存在理由が不明確なのである。
 インバウンド旅行業についても海外企業との取引で消費税は転嫁できない。冒頭のような結論で消費税が転嫁できないのに課税として扱え、というのはインバウンド旅行業の実態を無視したものである。
 いずれにせよ、消費税法は複雑化する一方であり、コストは増加する。本当に非課税、輸出免税の両制度の存在意義を明確にして本当に必要なのか、正しい課税方法は何なのか、という議論が必要なのはもっともである。

参考文献:2017年(平成29年)8月28日 納税通信 第3487号
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| 消費税法 | 09:59 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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配偶者に継続居住権の確保

     法制審議会の相続部会が追加試案を公表!

 法制審議会民法(相続関係)部会では,第23回会議(平成29年7月18日開催)において,中間試案後に追加された新たな方策等を対象として「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)」を取りまとめました。
 今回追加試案の対象項目となったのは、部会における6つの検討項目のうち「遺産分割等に関する見直し」及び「遺留分制度に関する見直し」です。 
 このうちの遺産分割等に関する見直しのうちの「配偶者保護のための方策」と「仮払い制度等の創設・要件明確化」について紹介します。

1.配偶者保護のための方策(持出免除の意思表示推定規定)
 婚姻期間が20年以上である夫婦の一方が他の一方に対し、居住用不動産の全部又は一部を遺贈又は贈与したときは、持戻しの免除の意思表示があったものと推定する旨の規律を掲げることとしました。
 例えば、相続人が配偶者と子供2人で、相続財産が居住用不動産(被相続人の持ち分1/2)が評価額3,000万円とその他の財産6,000万円の合計9,000万円、そして配偶者には居住用不動産の1/2である3,000万円が贈与されていた場合を考えてみましょう。
現行ですと配偶者の相続財産は次のようになります。
(相続財産9,000万円+贈与3,000万円)×1/2-贈与3,000万円=3,000万円
そして、配偶者の最終的な取得額は、
  相続財産3,000万円+贈与3,000万円=6,000万円
となり、結果として居住用不動産の贈与があった場合となかった場合とでの差異が生じないこととなってしまいます。
 婚姻期間が20年を超える夫婦の一方が他方に対して居住用不動産を贈与等する場合には、通常それまでの貢献に報いるとともに、老後の生活保障を厚くする趣旨で行われるものと考えられます。しかしながら上記のように持戻しが行われることにより配偶者の相続財産から被相続人の贈与財産の価額を控除してこれを減額されてしまうことは、被相続人の意思に反することと考えられます。
 もし、持戻しの免除の意思表示があった場合には上記のケースでは配偶者の相続財産はどうなるでしょうか。
  相続財産9,000万円×1/2=4,500万円
そして、配偶者の最終的な取得額は、
  相続財産4,500万円+贈与3,000万円=4,500万円
となり,贈与がなかった場合と比べ,より多くの財産を最終的に取得することができることとなるのです。
 このように、持戻しの免除の意思表示があったものと推定する規定は、被相続人の配偶者への貢献に報いるとともに、老後の生活保障を厚くするという意思を尊重した取扱いができるようになるものと考えられます。

2.仮払制度等の創設・要件明確化
 平成28年12月19日最高裁大法廷決定により、預貯金債権についても遺産分割までの間は共同相続人全員が共同で行使しなければならないこととなりました。
 遺産分割前にも払い戻す必要が発生することがあります。例えば、葬儀費用の支払い、共同相続人において被相続人が負っている債務の弁済、被相続人から扶養を受けていた共同相続人の生活費を支払う場合などがあり、その場合には共同相続人全員の同意が必要なのですが、全員の同意が得られない場合には払い戻すことができないという不都合が生じてしまいます。
 このような場合には、「家事事件手続法第200条第2項の仮分割の仮処分」を活用することが考えら、これにより,共同相続人間の実質的な公平を確保しつつ,個別的な権利行使の必要性に対応することができるものと思われるのですが、ここには「急迫の危険を防止」する必要がある場合に仮処分ができるという文言上の厳格な要件を課されています。
 そのため立法により、預貯金債権の仮分割の仮処分については,家事事件手続法第200条第2項の要件を緩和することとし,家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができるものとするようにしました。

 今回紹介した追加試案はいずれも相続人の被相続人が亡くなった後の生活を考慮したもので、本年末又は来年初めの要綱案の取りまとめを目指すとしています。

    参考資料  法務庁ホームページ
          「中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する
          試案(追加試案)」(平成29年7月18日)のとりまとめ

| 相続税及び贈与税 | 18:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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納税環境整備

マイナンバー・電子申告の現状!

 最近報道機関等で、電子申告及びマイナンバーの現状に関しての報道が出てきているので紹介します。
2017年8月、国税庁HP上で電子申告・納税サイト「e―Tax(イータックス)」について、2016年度の利用率をまとめ発表している。
所得税と個人の消費税申告は54%と2015年度比で1.5ポイント上昇した一方、目標値の58%には届かなかった。個人認証のためのマイナンバーカードの普及の遅れが影響したようだ。利用率は税務署のパソコンでイータックスを利用した場合も含む。法人税の申告は79.3%と3.9ポイント伸びたほか、法人の消費税申告も3.9ポイント増の77.3%と、企業の利用が増加している。
 申告書類の作成などでインターネットを活用したICT(情報通信技術)活用率は、所得税と個人の消費税の申告で76.8%と3.1ポイント伸びている。
 国税庁は個人の利用が目標に届かなかった理由を「マイナンバーカードや、対応するカードリーダーの普及が遅れたことが原因」と説明しているが、それだけでしょうか?
総務省の調べでは、今年5月時点でマイナンバーカードの発行枚数は1147万枚で、普及率が10%に満たない状態です。現実には、なかなかマイナンバーが国民に浸透しているとはいえないようだ。
そこで国税庁は2020年をめどに、紙の書類でやり取りしている住宅ローン減税などの年末調整の手続きを、インターネットで完結できるようにし、企業・会社員の負担を減らすよう検討している。更に、2019年度には大企業の法人税の電子申告を義務化させ、普及に弾みをつけたいようだ。今後の動向に注目してみたい。

 財務省は2017年10月から企業が輸出入の申告をする際に「企業版マイナンバー」の活用を始めることを決定した。企業などに割り振っている法人番号を使い、手続きを簡単にし、これまでは輸出入業者を特定するため、税関などが発給するコードを取得する必要があったが、法人番号に集約することで、企業の手間を省くことにした。
 企業版マイナンバー制度では設立登記をした法人や地方公共団体などに13桁の番号を割り振っている。個人を対象とした12桁のマイナンバーと異なり、公開情報として誰でもホームページ上で見られ、利用できるのが特徴だ。企業の行政手続きや商取引を効率化する効果が見込まれている。
現状では、輸出入業者を特定するために税関などが発給する2種類のコードを使っており、いずれも企業が自ら取得する必要があり、税関はコードを持たない企業の輸出入情報を蓄積しにくかったようだ。
2種類のコードを企業版マイナンバーに紐付けるなどして、今年10月からは運用を法人番号に集約する。コードを持たない企業でも輸出入の実績が蓄積されれば検査にかかる時間が減るため、手続きが円滑になる。企業版マイナンバーの活用を始めるのに伴い、税関が発給するコードの受け付けは停止する方向だ。企業版マイナンバーは法人税の申告や入札参加資格の確認などに使うことを想定して導入され、輸出入申告にも活用することで、番号制度を浸透させる狙いもある。さらに輸出には消費税がかからないことを悪用し、不正に消費税還付を行う企業が増えて来ており、その歯止めのためにもマイナンバーは活用されていくのであろう。

 納税環境も変わりそうだ。従前まで現金及びクレジットカードにて納税していた税金も、最近ではインターネット上での納税手続きやスマートフォンを利用しての納税をさせるなどを進めてきており、納税手段を増やす方向で進められている。
しかし、これらの普及のためにはマイナンバーカードが必要となる。カード普及率10%に満たない現状を考えると、まだまだ行政の手腕が必要となろう。

                                 

                   参照資料  日本経済新聞
                         国税庁・総務省ホームページ

| 納税環境整備 | 08:02 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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インバンド業者の税務訴訟への一考察

平成29年2月3日最高裁の決定により東京高裁の判決が、平成28年2月9日判決が出たことに意見を申し述べます。
 
<事案の概要>
① 本件は、旅行業法に基づく旅行業等を目的とする日本法人である日本法人であるA INC (以下「A社」という。)の主催する訪日旅行についてA社との間に行っている取引(以下「本件取引」という。)が消費税法7条1項により消費税が免除される取引(以下「輸出免税取引」という。)に当たるとして、各課税期間分の消費税及び地方消費税につき、本件取引に基づいてA社から受領した対価の額を消費税の課税標準額に算入せずに確定申告をしたところ、所轄の芝税務署長から、本件取引が輸出免税に該当せず、本件取引の対価の一部が消費税の課税標準額に算入されるとして、各更正及び過少申告加算税賦決定を受けたことから、これらの各処分の取り消しを求めた事案である。
  

<当裁判所の判断>
① 当裁判所も、本件取引は輸出免税取引に該当せず、本件更正処分及び本件各賦課決定処分はいずれも適法であるから、控訴人の請求はいずれも棄却すべきものと判断する。
その理由は、原判決の‘事実及び理由’の記載のとおりであるから、これを引用する。

(1)‘本件旅行パッケージ商品’を‘パッケージ商品’に改める。

(2)‘確実に提供する’を‘これらの役務が各種サービス提供機関によって確実に提供されるように手配する’に、‘原告が本件訪日旅行客に対して国内における飲食、宿泊、運送等の役務を確保し、提供した対価’を‘控訴人がこれらの役割を果たした対価’に改め、‘行事終了後に’の次に‘、控訴人が企画し手配したとおりに’を加え、‘役務を提供した’を‘役務が提供された’に改め、‘「本件訪日旅行客に対して各種サービス提供機関による役務の提供という方法により国内における飲食、宿泊、運送等の役務を提供する」を「国内における飲食、宿泊、運送等の旅行素材の組合せを企画し各種サービス提供機関を手配することによりこれをA社が確実に利用できるようにする」’に改める。

  (3)‘本件訪日旅行客に対し’を‘飲食、宿泊、運送等の役務が各種サービス提供機関によって確実に提供されるよう手配する’に改める。
  (4)‘このことは’を削り、‘ことからも裏付けられる’を‘ことや、消費税法施行規則5条1項1号が、消費税法7条1項1号の輸出免税取引に該当することの証明のために整理、保存しておくべき書類を、関税法の規定による税関長の輸出の許可もしくは積込みの承認があったことを証する書類または当該資産の輸出の事実を税関長が証明した書類と規定していることなどは、上記の法解釈を前提とするものと解される’に改める。


 (5)‘同号ハの範囲を’から末尾までを‘同号ハ該当性の判断は上記立法趣旨等を踏まえて行うべきである。’に‘運送’を‘輸送’に改め、‘またはこれらに類するもの’を削り、‘国内において消費されるサービスであるということができるから’を‘A社が上記役務の提供により直接享受する便益は、控訴人が企画し手配した国内における飲食、宿泊、運送等の旅行素材の組合せを本件訪日ツアーの催行に際して利用することができることであり、この便益は上記旅行素材が所在する国内においてでなければ享受することができないものであるから、上記役務の提供は、消費税法施行令17条2項7号イ及びロに掲げるものに準ずるもので、国内において直接便益を享受するものとして’に改める。

(6)‘本件取引は’の次に‘、国内に主たる事務所を有する事業者である控訴人が国内において行った役務の提供(消費税法[平成27年法律第9号による改正前のもの]4条3.項2号、消費税法施行令[平成23年政令第198号による改正前のもの]6条2項7号’として課税資産の譲渡等に該当し‘を加え、’消費税等‘を’消費税‘に、’各事実が‘を’各事実のうちに‘に改める。

② よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京高等裁判所第7民事部
 裁判長裁判官 菊池洋一 裁判官 古田孝夫 裁判官 工藤正

                                  


<反論意見>
以上の判決について反論意見を述べます。

① まず、表記の表現のことばを改めている点。
そもそも包括的旅行パッケージ商品の販売であることを改訂しているだけでなく、都合の良いことばに改めている点。
売上の取引先が海外の旅行会社であって旅行者に販売しているわけではない。
そこで、便益を国内で受けるという施行規則にのっとってあてはめ、飲食、宿泊、運搬についてサービスの提供は国内であるからということで、課税資産の譲渡としてとらえる判断はいかがなものかと。
インバウンド旅行業そのものは、それぞれ形態も違うし取引の仕方も違う。すべてのインバウンド旅行業者にこの判決の判断をあてはめることには、違和感を持つ。

② 次にインバウンド旅行業者の海外旅行会社に対する消費税の輸出免税の該当性に
 ついて述べる。
   
A. 輸出免税取引であるかどうかを検証する前に、誰と誰の間の、どの取引を検証するのかを、明確にする必要がある。本判決の対象となる取引は、日本の旅行会社である弊社と、海外の旅行会社との間で行われたものである。この取引が輸出免税取引にあたるかどうかである。
旅行者は弊社の取引相手ではない。 まず取引相手であるということが前提で、その取引が輸出にあたるかということが条件。
   弊社と海外からの旅行者の間にはそもそも取引関係がない。
   弊社の顧客(取引先)は海外の旅行会社であり、彼らの顧客は海外在住の旅行者である。
    これは代金支払いの経路からして、疑う余地のない事実である。

B.施行令の解釈に論理の飛躍
    判決には、消費税法施行令第17条第2項第7号ロまたはハに、「非居住者に対
 する飲食または宿泊、バス、タクシー等による旅客の輸送」は輸出免税取引に該当しないとあるが、該当する、しないに関わらず、日本の旅行社と海外からの旅行客の間には、そもそも取引の事実がないのでこの解釈は意味を為さない。
   この規定は、日本のホテル等が非居住者と、直接にせよ間接にせよ取引を行った場合にその取引が輸出免税にあたらないとしたものである。

本意見書は、原処分庁提出の内容を踏まえ、判決の理由を補足しつつ改めて整理して述べると共に、あわせて反論を行うものである。
なお、本反論書で用いる用語は、別途定義しない限り、判決の理由(以下「判決決定理由」という。)と同様とする。

c. 本件取引は輸出免税取引に該当すること

 原処分庁は、本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれており、当該金額は、消費税法施行令17条2項7号ロ又はハに該当する役務の提供の対価であるから、輸出免税取引の対価の額に該当しないとする。
 しかしながら、以下詳論するとおり、本件取引で控訴人が海外旅行会社に対して提供する「役務」の内容は、包括的旅行プランの手配、企画、情報提供等であって、国内における飲食、宿泊、輸送等の役務とは言えない。消費税法施行令17条2項7号ロ又はハの役務には全く該当しない。本件取引対価の額は、その総額が、非居住者である海外旅行会社に対して行われる役務の提供の対価であるから、輸出免税取引の対価の額に該当するものである(消費税法施行令17条2項7号本文)。

(A) 本件取引において、当原告が海外旅行会社に対して提供する「役務」には、国内における飲食、宿泊、輸送等に係るサービスは含まれないこと

(1) 控訴人が提供する「役務」の内容

 判決理由でも認められているとおり、控訴人は、本件取引において、海外旅行会社が主催する日本国内旅行に参加する本件旅行者の日本国内での飲食、宿泊、輸送等に係る各種サービス提供機関を手配し、それらを組み合わせた日本国内旅行を企画し、パッケージ商品として海外旅行会社に販売している。
 そして、本件取引は、控訴人がパッケージ商品の手配を完了した時点で終了し、当原告は、国内での飲食、宿泊、輸送等の各種サービスが提供される場面において何ら関与するものではない。
 したがって、控訴人自身が各種サービス提供機関から国内での飲食、宿泊、輸送等に係る役務の提供を受け、それを海外旅行会社に対して提供しているわけではないことは明らかである。すなわち、本件取引で控訴人は、海外旅行会社に対し、情報の収集、旅行の手配、企画、情報提供等を行うと共に、当該旅行期間中に各種サービス提供機関が提供する国内での飲食、宿泊、輸送等の各種サービスを受けることができる地位を設定するという包括的な役務を提供しているだけなのであって、当該包括的な役務提供の対価である本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額は含まれているとはいえない。
 それにもかかわらず、原処分庁は、本件取引において当原告が海外旅行会社に対して提供する「役務」の内容自体を検討することなく、本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれているなどとしており、明らかな誤りである。これはあてはめであり、紆余曲折な取り上げを正当化している。

(2) 本件取引は個人旅行者との間の企画旅行契約ではないこと

 なお、本件取引は旅行業者と旅行業者との間の契約であって、旅行業者と個人旅行者との間の企画旅行契約とは性質を異にすることを、念のため付言しておく。
 すなわち、消費税法基本通達においては、旅行業者と旅行者との間の企画旅行契約に関して「旅行業者が主催する海外パック旅行に係る役務の提供は、当該旅行業者と旅行者との間の包括的な役務の提供契約に基づくものであり、国内における役務の提供及び国外において行う役務の提供に区分される」(消費税法基本通達7-2-7)とされているところ、国税庁は、旅行業者と旅行者との間の企画旅行契約は、飲食、輸送、宿泊等を含む包括的な請負契約であると取り扱っているようである(三宮修編『消費税法基本通達逐条解説』376頁)。
 しかしながら、上記の国税庁の解釈が正しいか否かは措いて、上記のとおり、本件取引は旅行業者と旅行業者との間の契約であって、旅行業者と個人旅行者との間の企画旅行契約とは性質を異にするものであるから、旅行業者と旅行者との間の企画旅行契約の内容をどのように解釈するとしても、本件取引において控訴人が海外旅行会社に対して、飲食、輸送、宿泊等の役務を提供していないことに変わりはないのである。飲食、輸送、宿泊等の役務を提供しているのは、海外の旅行会社なのである。

(B)小  括

 以上のとおり、本件取引において、控訴人は、海外旅行会社に対し、情報の収集、旅行の手配、企画、情報提供等の包括的な役務を提供しているのであって、国内での飲食、宿泊、輸送等に係る役務を提供しているわけではない。そして、これは、消費税法施行令17条2項7号イ乃至ハの役務には該当しない非居住者に対して行われる役務の提供であるから、本件取引は輸出免税取引に該当し(同号本文)、本件取引対価の額は、その総額が輸出免税取引の対価の額に該当する。

(1)原処分庁の主張は何れも不合理であること

 原処分庁は、①本件取引対価の額が、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価の額を含む本件国内パッケージツアーに要する費用の額を積み上げた金額に控訴人の利益の額を上乗せした金額により決定されていると認められること、及び、②本件国内パッケージツアーにおける本件旅行者の国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価が申立人によって各種サービス提供機関に支払われていることの2点を指摘して、本件取引対価の額の中には、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれているとする。
 しかしながら、以下詳論するとおり、そもそも上記①の事実は認められず、また、上記②の事情も、本件取引対価の額の中に、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれているという原処分庁の主張を根拠づけるものではない。

(2)上記①の事実は認められないこと

 本件は、売上金額から仕入金額を差し引いた金額が粗利になるという当たり前の計算をしているだけであり、そうであるからと言って、売上金額、すなわち本件取引対価の額の決定方法が、仕入金額に控訴人の利益の額を上乗せすることによって決定されていることにならないことは明らかであるし、ましてや、本件取引対価の額が本件国内パッケージツアーに要する費用の額を積み上げた金額に控訴人の受取手数料を加算して決定されていることにも全くならない。
 確かに、控訴人は、移動にかかる費用、宿泊の費用、観光施設の入場料等を積算して「包括的に」利益が上がるようにしているが、これは結果として包括的に利益が上がるように日本国内旅行を企画・手配しているということに過ぎない。本件取引対価の額は、本件国内パッケージツアーに要する費用の額を積み上げた金額に当原告の受取手数料を加算して決定されているわけではないし、ましてや、本件国内パッケージツアーに要するそれぞれの飲食、宿泊、輸送等の役務の対価に個別に対応しているわけでもない。

(3)上記(2)の事情が原処分庁の主張を根拠づけるものではないこと

 取引相手に「役務」を提供するために必要な費用を支払ったからといって、その費用に係る役務等が、取引相手に提供する「役務」の内容に含まれるわけではない。
 このことは、例えば、弁護士が相手方と交渉するに当たって電話代を支払ったからといって、弁護士が依頼者に提供する「役務」は代理人として交渉することであって、提供する「役務」に電話で話ができるようにすることが含まれるわけではないことを考えれば明らかであろう。
 したがって、本件国内パッケージツアーにおける本件旅行者の国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価が申立人によって各種サービス提供機関に支払われているからといって、本件取引において控訴人が海外旅行会社に対して提供する役務の内容に国内における飲食、宿泊、輸送等のサービスが含まれることを全く基礎づけるものではなく、また、本件取引対価の額の中に、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価に相当する金額が含まれることにも全くならないのである。

(4)直接に役務の提供を行う必要がないとの主張について

 また、原処分庁は、控訴人が直接に国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供を行うものではないとしても、非居住者である本件旅行者が国内において直接便益を享受する役務については、消費税法施行令17条2項7号ロ又はハに当たり輸出免税取引に該当しないとする。
しかしながら、上記原処分庁の主張は、審査請求人の提供する役務に間接的にでも国内における飲食、宿泊、輸送等の役務が含まれることを前提として、その場合に、国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供を審査請求人自身が直接行わないとしても、当該役務は消費税法施行令17条2項7号ロ又はハの役務に該当すると言っているだけである。
 そして、消費税法上、明確に、消費税は事業者が国内において行う役務の提供に対して課される旨規定されている(消費税法4条)のであって、事業者が直接にも間接にも行っていない役務の提供に対して消費税が課されることが許されないことは明らかである。
 したがって、本件取引においては、上記のとおり、当原告が提供する役務に国内における飲食、宿泊、輸送等の役務が含まれない以上、上記原処分庁の主張は、何ら本件取引が輸出免税取引に該当することを否定する理由とはならないのである。

(5)小  括
① 以上のとおり、原処分庁の主張は何れも不合理であって、本件取引対価の額の中に、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれていることを根拠づけ、本件取引が輸出免税取引に該当することを否定するものでは全くない。

② 原処分庁が主張する輸出免税の趣旨からも、本件取引は輸出免税取引とされるべきであること

 前記のとおり、当原告が提供する「役務」の内容には、国内における飲食、宿泊、輸送等の役務が含まれず、消費税法を文言通り適用すれば、本件取引は輸出免税取引と認められるが、更に、原処分庁が主張する輸出免税の趣旨からも、本件取引は輸出免税取引とされるべきである。
 すなわち、原処分庁は、消費税法施行令17条2項7号の規定は、当該役務の提供を受けることが国内において完結するような性質の役務の提供については、国境をまたがない、正に国内において消費されるサービスであり、輸出と捉え得るものではないので、非居住者が国内において直接便益を享受する役務の提供として輸出免税取引から除外するものであると主張していると思われるが、本件取引は、非居住者である海外旅行会社に対して役務が提供されているだけでなく、更に、役務の提供を受けた海外旅行会社が、国外において、本件海外旅行者に対して役務を提供することが想定されているものであるから、正に、国境をまたぐ国内において完結する性質のものでないことは明らかである。
したがって、本件取引は、国境をまたぐ国内において完結する性質のものではないのであるから、上記原処分庁の主張する消費税法が輸出免税を認める趣旨からしても、輸出免税取引と認められるべきである。


(6)総  括

 以上のとおり、本件各課税期間の消費税及び地方消費税については、本件取引対価の額の総額が輸出免税取引の対価の額に該当することを前提として更正されなければならず、本件更正処分及び賦課決定処分は直ちに取り消されるべきであると考える。

以 上

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平成29年度税制改正で災害に関する措置が常設化

   熊本地震被災者救済のため平成28年に遡って適用されることに!

 平成29年度税制改正では、自然災害に対する税制上の措置が随所に見受けられます。これは近年災害が頻発していることを踏まえ、災害減免法に加え、これまでは災害ごとに特別立法により手当てをしてきた対応を常設化し災害対応の税制基盤を整備するものとなっています。また、2016(平成28)年4月に発生した熊本地震を受けて昨年に遡って適用されるものとなっています。
 今回はその中で、特に法人税について常設された措置をご紹介します。

(1) 災害損失の繰り戻しによる法人税額及び地方法人税額の還付
1. 制度の概要
 災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間(以下「災害欠損事業年度」という。)において生じた災害欠損金額がある場合には、その災害欠損事業年度開始の日前1年青色申告者である場合には、前2年)以内に開始した事業年度(以下「還付所得事業年度」という。)の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付できることとされました。
 また、災害損失の繰戻しによる法人税額の還付が行われる場合には、地方法人税の還付金に相当する金額として、法人税の還付金額の4.4%に相当する金額が併せて還付されることとされました。

2. 災害の範囲
 震災、風水害、火災その他自然現象の異変による災害、人為による異常な災害及び生物による異常な災害をいいます。

3. 災害損失欠損金額
 災害損失欠損金とは、災害欠損事業年度において生じた欠損金額のうち、災害損失金額に達するまでの金額をいいます。

3.法人税の還付金額
 法人税の還付金額は還付事業年度の法人税額に、還付所得事業年度の所得金額に対する災害欠損事業年度の災害損失欠損金額(※)の割合を乗じた金額となります。
    ※還付所得事業年度の所得金額を限度とします

4. 適用時期
 2017(平成29)年4月1日から施工されますので、2017(平成29)年4月1日以後に確定申告書の提出を行う法人については、この制度の適用を受けることができます。
 なお、この制度は適用開始前の2017(平成29)年3月31日以前1年以内に終了した事業年度分の法人税の確定申告書を同年3月31日までに提出した法人については、同年5月1日までに還付請求書の提出を行うことによりこの制度が受けられることとされていました。

5. 還付請求書の提出に当たっての注意点
 ① 青色申告書を提出する法人以外の法人や、資本金が1億円を超える法人についてもこの制度の適用を受けることができます。
 ② この制度の適用を受けるためには、次の要件を満たしていることが必要です。
 イ. 還付所得事業年度から災害欠損事業年度の前事業年度まで継続して確定申告書を提出していること。
 ロ. 所定の事項を記載した還付請求書を災害欠損事業年度の確定申告書又は仮決算による中間申告書の提出と同時に   納税地の所轄税務署長に提出すること
 ③ 前事業年度の税額が10万円以下で法人税の中間申告を要しない場合でも、この制度による仮決算の中間申告が可能です。
 
(2)仮決算の中間申告による所得税額の還付
1. 制度の概要
 災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間において生じた災害損失金額がある場合には、仮決算の中間申告において、その中間申告において課される所得税額(復興特別所得税額を含む。)でその中間期間の法人税額から控除しきれなかった金額(災害損失金額を限度)を還付することとされました。

2.適用時期
 2017(平成29)年4月1日から施工されますので、2017(平成29)年4月1日以後に仮決算による中間申告書の提出を行う法人については、この制度の適用を受けることができます。

(3)その他
1.特定非常災害発生日から同日の翌日以後5年を経過する日までの期間内に、被災代替資産等の取得等をして事業の用に供した場合には、特別償却をすることができることとされました。

2.収用等又は特定の資産の譲渡に伴い特別勘定を設けた場合の課税の特例については、特定非常災害(※)に起因するやむを得ない事情により指定期間内に代替資産の取得が困難となった場合には、一定の要件の下にその期間を2年以内の範囲で延長することができることとされました。
 ※特定非常災害とは、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律第2条第1項の規定により特定非常災害として指定された非常災害をいい、東日本大震災後の災害では2016年の熊本地震が該当します。 
                                            参考資料  国税庁ホームページ


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